読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

最終飛行 佐藤賢一著 文藝春秋 2021年

 サン=テクジュペリは作家であり、飛行士だった。
 ナチスドイツによってパリが占領され、アメリカに亡命した彼は、イギリスに逃げたドゥ・ゴール派にもナチスドイツに言いなりのヴィシー派にも与しなかったため、亡命フランス人たちの間で批判を浴びる。そんな葛藤の時期に描かれたのが、「小さな王子」(邦題「星の王子さま」)だった。
 文人としてのコネを最大限使って、やがて念願の戦線復帰が叶い、再び飛行機に乗ることに。アメリカ製の最新機ライトニングで、武器を積まず、自分が傷つけられる危険だけ背負いながら戦う偵察飛行を繰り返すが――
 空への憧憬、友情、時代に翻弄される苦悩。
 読後、「星の王子さま」を読み返したくなる、繊細にして重厚な長編小説。 
                        (帯文に付け足しました)

 佐藤さんの作品『ドゥ・ゴール』を、別の側面から見たような。そうか、ドゥ・ゴールとサン=テクジュペリって同時代の人だったのか、と思うくらいの知識しか私は持ってなかったので、色々知らないことだらけでした。フランス、ドイツに降伏した後、ユダヤ人迫害とかの政策まで追従してたのね~。イギリスがフランス海軍を攻撃、壊滅させたってのは『ドゥ・ゴール』でも描かれてたような。
 サン=テクジュペリという人が 周囲の思惑もお構いなしに我が道を行くタイプで、こういう人を魅力的に描くのは佐藤賢一さんお得意の筈なんですが、今回ばかりは眉を顰めることが多くてですね。何しろ舞台は曲りなりにも軍隊で、戦争中で、一個人の希望なんか聞ける状態じゃない筈ですし。「役に立ちたい」と言いながら、自分の思う「役に立つ」ことしかやりたがらない。本当、駄々こねてる感じで、でもそれが通ってしまう。結局サン=テクジュペリの最期にも繋がる訳ですが。
 サン=テクジュペリの飛行機が行方不明になったまま、ってのは聞いたことありました。機体が見つかったとかってニュースもありましたっけ。でもそれが第二次世界大戦での撃墜と知らず; …いや、何となく飛行機トラブルかと思ってた;; 
 『星の王子さま』は学生の頃読みました。王子の小さな星が、ドイツに占領されたフランスの状態を反映してるとは思いもしませんでした。当時の私には響かない作品だったのですが、今読んだらどうだろう。数年前、『しくじり先生』でオリエンタルラジオの中田さんが授業してらしたのを見て、興味は持ったんだけどそのままだったんだよなぁ。

 佐藤さんというと、同時代を3作違う方向から描く、みたいなイメージを、私は勝手に持っています。次はムッソリーニかな、ケストナーとかどうかしら。
 そうそう、サン=テクジュペリの様子、大柄でがっしりしてて社交的で、みたいな描写を読んでて、連想したのはフィギュアスケーターのキャンデローロ選手でした。…我ながら、フランス人のイメージサンプルが本当に乏しい(苦笑;)。