読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

創竜伝 15 〈旅立つ日まで〉 田中芳樹著 講談社ノベルス 2020年

 シリーズ最終巻。
 ネタばれあります、すみません;

 電車で東京へ行けるだけ行こうとする竜堂兄弟。途中でまた竜蛇や飛天夜叉に襲われるが、竜に変わることで退治し、何とか中野区の我が家へ辿り着いた。叔父叔母夫妻に挨拶し、身支度を整えた後、灰から逃れて埼玉県へ。月へ向かう準備をする筈だったが、四人姉妹のヴィンセント一派に火炎で追われ竜に変身、そのまま月の裏側へ向かう。
 クレーターから月の内部へ、人工基地内で野狗子や飛天夜叉に襲われるが、牛種の姿はなかなか見えない。漸く現れた相柳、蚩尤兄弟と渡り合う四人の前に、ラスボスの映像が映し出される。炎帝神農氏―――原始、人間に文明を与えた文化英雄。
 炎帝は三千世界について語り、もう別の世界に渡るつもりだと言う。10億もある世界を渡り歩き、文明を育てて刈り取ると。去り行く炎帝を後目に、蚩尤は竜堂兄弟に攻撃を仕掛け、兄弟たちは地下に逃亡。結界に囚われていた西王母の娘3人を救い出し、その能力で仙界に渡る。
 牛種たちは仙界を襲っていた。白竜王は蚩尤と一騎打ち、時空の狭間から現代日本厚木基地に落ち込む。アメリカ軍やトカゲ兵も入り乱れての戦いを経て蚩尤は燃え尽き、竜堂兄弟は京都に向かう。京都では、一足先に戻った蜃海、虹川、水池が小早川奈津子を宇宙大将軍に担ぎ上げていた。だが、小早川奈津子は力を使い果たし、急速に衰えていく。彼女は竜種の血を望みながら息果てた。蜃海、虹川、水池の3人は地上に残り、現政府とやりあう道を選ぶ。瑤姫から、仙界に通じる鈴を貰いながら。
 能力に目覚め、不老不死となった竜堂兄弟は地上にはいられない。竜堂邸ごと仙界に移り、西王母から竜珠を受け取る。三千世界の何処へでも移動できる珠、炎帝を追っていける珠を。…

 終わった――――!!
 いや、色々あるんですけどね、5000年前の戦いと3000年前生まれ変わりの差の謎はとか、竜泉郷にいて船津老に殺された女の子とやらは何だったんだ、あの頃までは竜種残ってたのかとか、噴火口に見えた影については言及なしかとか。
 細かい所で言えば、宇宙空間通ったチョコバーや衣服はどうなってたんだろうとか、月基地にドローンがあるのはどうだろうとか。
 でも、ある程度の伏線は回収してるんだよなぁ。小早川奈津子の最期も、ああするしかないよなと思ったし。 そう言えば、世界の外が、とか何語で話してるのか、とか本質を突くのは余君でしたね。さらに、始の 炎帝と玉帝がもしかしたら、って予測には成程、でした。
 この先、作者自身は続編も外伝も書かないということなので、竜堂兄弟の修業期間の三年間なり三千世界の旅なり、三人組の地上での奮闘なんかは二次創作でどうぞ、ということなんでしょうか。
 文庫版のイラストは、そのままCLAMPさんが描くのかな。
 とりあえず、読後感が何かすげー清々しかったんですよ。ほっとしたというか、感謝というか。ええ、この上『銀英伝』の外伝は、とか言いませんとも(苦笑;)。
 田中芳樹先生、ありがとうございました。ここ数年の「ちゃんと終わる」ブームの先駆けは、田中さんだと私は思っています。