読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

朱く照る丘 ソナンと空人4 沢村凛著 新潮文庫 2020年

 『ソナンと空人』最終巻。
 ネタばれあります、すみません;

 シュヌア家に戻ったソナンは、かつて顧みたこともなかったシュヌア領地を検分し、管理人の横領に気付く。輪笏で学んだことを参考に、事を荒立てない方法で管理人を窘めたが、それをきっかけに王都の荒廃ぶり、ひいては統治のありようについて疑問を抱くようになる。
 出会って以降 連絡を取り合っていた母親パチャトの紹介で、ソナンは商人のナーゲンとよしみを結んだ。ナーゲンから色々な知識を学ぶソナン。異国のこと、新しい考え方、商品の情報。そしてソナンは、弓貴との交易の要となる駐在者が誰かを知って驚愕する。六樽の六番目の姫、すなわちソナンの妻ナナだった。
 ソナンは謀って、改めてナナとの出会いを演出し、トコシュヌコの国で、ナナとの結婚を成立させる。
 貧民層を中心に襲った疫病が引き金となって、革命が起きようとしていた。ひょんなことからその計画を知ったソナンは、王家に忠誠を誓っている父親を抑えることを約束、その襲撃に参加することを決意する。
 父を倒し、ナナたちと共に弓貴行きの船に乗ったソナン。だが、六樽はソナンを受け入れなかった。トコシュヌコの王を裏切ったソナンを信用できない、と言い放つ。…

 一気でした。
 いや、ナナがトコシュヌコへ来ていて云々、ってのはやりすぎではないかとか思ったりしたけど、出会いからやり直す、ってのは展開として胸きゅんでした(笑)。
 革命まで起こすのも、でもそれが最後の六樽とのやり取りにまで繋がるんだから、最初からの筋立てでしょうし。散々苦労したんだから幸せになってもいいじゃん、って読者側は思ってる所で信念を問われる訳ですよね。最終章の「だから、彼の墓は輪笏にある」の一文には騙されました。どきどきしたなぁ、何しろ沢村さん、『黄金の王 白銀の王』の前科もあるし。
 最初に出て来たソナンはどうなったのかちょっと気になりました。商人に転職した、って一文もあったので、ソナン(空人)がナーゲンに確認を依頼された「まじめで心優しい人物」がもしかしてそうなのか?と一瞬思ったんですが、それならソナン(空人)が名前を聞いた時点で気が付く筈だよなぁ、違うよなぁ、と思ったり。同じような感じで、ナーゲンの仲間にいたらいたで言及される筈だし。ソナンの人生にはその後関わらなかった、ということなんでしょうか。

 罪を償うということ、やり直すということ、赦すということ。異世界転生もので今までの人生がチャラになる、という設定はよく見かけますが、多分大きなアンチテーゼを担う一作だと思います。
 面白かったです。