読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

丕緒の鳥 十二国記 小野不由美著 新潮社 2013年

 『十二国記』シリーズ、12年振りの新作短編集。
 ネタばれになってるかも、すみません;

 己の役割を全うする覚悟を決めた名も無き男たち。その清廉なる生き方――

 「丕緒の鳥」…国の繁栄を表す「鳥」を象るため苦悩する丕緒
 「落照の獄」…罪人は死して償うべきか。命の意味を問う瑛庚
 「青条の蘭」…希望を繋ぐ苗を届けるため、王の許へ走る標仲
 「風信」………生きとし生けるものの命のため、暦を作る嘉慶たち
                                     (帯文より)

 私は今年、「9年に一度の幸運期」なんだそうで。
 そういえば以前、「十二年に一度の幸運期」って言われたこともあったなぁ、あの時それを話題にして盛り上がった友達がまだ独身だったから、そうか、そのくらい経つのか、「長年の望みが叶う」とかいう一文もあって、「長年の望みって何…??」と首を傾げたんだっけ、で結局、『十二国記』の新刊が出ることが年の初めにはわかっていたから、これのことかしら、何て他力本願な、と苦笑したんだったよなぁ。
 …で、今年。12年振りの新作短編集です。
 …『十二国記』は私の幸運期にしか出ないのか!?
 いやもう、出てくれただけで有難い限りなんですけどね。ここには自分が買った本の記事は原則書いてないんですが、思わず書いちゃったくらい嬉しい。
 『丕緒の鳥』『落照の獄』は雑誌掲載時に一応読んでいて、こと『丕緒の鳥』においては、陽子の言葉「私と――あなただけで」が、まるで恋の告白のようだ、とどきどきしたのでしたよ。実際、陽子は丕緒にとって、ギリシャ神話に出て来る、インスピレーションを与える芸術の女神のような存在になった訳ですが。
 小野さんの迫力ある筆致が味わえる『青条の蘭』、度重なる不運、悲運に見舞われながらそれでも前進を止めない人々、果たして苗は無事王の許に届くのか。シリーズ読破している読み手の興味は「この話はどこの国の、いつの時代の話なんだ!?」につきる訳で。いや、それさえ判ればこの蘭が間に合ったのかどうか察しがつくから。で、とうとう明かされた一文に、確信が持てなかった情けなさ(;;)。
 「…この都市名は、多分あそこだったよねぇ…」と過去のシリーズを本棚から抜き出して捲りました、ごめんなさい、ごめんなさい; 私、ファンを名乗れないわ;;
 まぁこれ私、似たようなことを前の短編集『華胥の夢』の『華胥』でもやってるんですけどね。最後の台詞で明かされる人物名がぴんと来ず、いくらか経ってから「…もしかしてあの人か!」と思い当るという間抜けな過去を思い出しました。…本来ならすっきり爽快感が味わえた筈なのになぁ。
 待ち望まれた王の登極、『風信』では王は人のみならす、鳥獣、昆虫にまで安寧をもたらす様子が描かれます。「いるだけでいい」と言って貰える幸せ。…いや、それだけではいずれ済まなくなるんだけど、とりあえずはね。
 
 同じような時期に、小野不由美さんの原作をいなだ詩穂さんが漫画化された『ゴーストハント~悪夢の棲む家』1巻も手に入れたんですが、家に持って帰ってみると帯が破れていたので何だかがっかり。
 …いや、たかだか帯なんだけどさ、でもそしたら何のためにビニールでぐるぐる巻きに保護してんのよ、某本屋; こっちは信用するじゃんか。
 いやいやこちらも読めるだけ幸せか。続き書いてくれないかなぁ、小野さん。ジーンの死の真相は知りたい限りです。…これも長年の望み(笑)。