読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

風と双眼鏡、膝掛け毛布 梨木香歩著 筑摩書房 2020年

 双眼鏡を片手にふらりと旅へ。地名を手掛かりにその土地の記憶をたどり、人とそこに生きる植物や動物の営みに思いを馳せ、創造の翼を広げる珠玉のエッセイ集。    (出版社HPより)

  品性と知性に満ちた文章。そのせいかな、所々妙にユーモラスなのに、「…あの、笑って、いいんですよね…??」と確認したくなってしまう(苦笑;)。飼い犬のしっぽが天井窓に挟まれたとか、憧れの幻のキノコが店で売られていた哀しみとか、「犬落瀬」の地名の由来「昔、殿様が通ったときに犬が川に落ちたみたいですよ」「はあ」とか。公衆浴場で見かけた謎の外国人、てのは怖い話テイストでしたが。
 平将門の首が「何カ所か落ちたらしく」ってのも妙に可笑しかったなぁ。失速してはまた頑張って飛んだんだ、義経の墓が各地にあるようなものかしら(笑)。平将門というとついこの間もそれに触れられた小説読んだばかりで、時々あるんですよね、一つの事柄について、急にあちこちで目に触れる機会が多くなることが。何かの縁なんですかねぇ。北海道の「かりかん(仮監)」では、どうしても「『ゴールデンカムイ』じゃん…!」って思っちゃったし(苦笑;)。
 熊野街道の宿でのヤドカリの刺身とか焼石味噌汁とか興味津々ですね。舌、やけどしそう(笑)。
 連想することも色々で、それならうちの地名の由来は何なんだろうとか、「近江なる いく野の村の茶屋見れば まだ売りもせぬ 飴のねりたて」のパロディ句には、高校の時、友人が作った「春は揚げ物 ようよう茶色くなりゆく…」を思い出しましたし。津波の後、津波耐性のない外来植物のみが消えた、という記述には素直に凄い、と思いました。日本ミツバチがスズメバチに対する対抗手段を持ってる、っていうのと似てる気がしたなぁ。
 他にも知らないことを沢山教えて頂きました。都鳥がユリカモメだったとは…! 玉蟲左太夫なんて紀行家も初めて知りました。誰か彼を題材に小説書いてよ、大河ドラマとかにしても十分一年持ちそうじゃん!
 アイヌや沖縄はどうしても重い記憶が付き纏います。知らないと言ってはいけない記録でした。