読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

怪しい店 有栖川有栖著 角川書店 2014年

 社会人アリスシリーズ、「店」を題材にしたミステリ短編集。
 ネタばれになってるかも、すみません;

古物の魔
 骨董品屋の店主が撲殺された。場所は店の奥の住居部分で、発見者は被害者の甥で店を手伝っていた時也。凶器は見つかっていない。店主は先ごろ仕入れた書き物机の引き出しから遺言状を見つけ、その相手を強請っていたらしい。女に入れ上げ、金をつぎ込んでいた様子も証言された。犯人は強請られていた男か、恋人である女か、それとも…。

燈火堂の奇禍
 趣味が高じて古本屋を開業した店主が、万引き犯を追い掛ける途中、心臓発作を起こして倒れた。偏屈な店主は本当にその古書が欲しいかどうか、客に十日後にもう一度来させて試していたらしい。事件のあらましをアリスは火村に語り、火村はその客の人物像を推理する。同時に、店の中で何が起こったのかも。

ショーウィンドウを砕く
 芸能事務所が立ち行かなくなって、社長の夕狩正比古は愛人の女を殺してしまった。金遣いの荒い無邪気な女の行く末を案じての殺人、物取りの犯行に見せかけようと女の財布から金を抜き取り、ブランドジュエリーは海に捨てた。疑われる余地などないと思っていたが、火村には最初からお見通しだったらしい。

潮騒理髪店
 フィールドワークの途中、電車の待ち時間を潰すため海辺の理髪店に入った火村。腕のいい店主は、今日で店を閉めると言う。最後の日にきた客は火村を含めて三人、常連の男と数年ぶりにやって来た若い女性。その若い女性は、どうやら火村が先ほど見かけた、電車に向かってハンカチを振っていた女と同一人物のようだ。

怪しい店
 <みみや>という名のその店は、人の悩みを聞くのが商売だった。聞き上手の女店主は、だがそこで聞いた弱みをネタに強請りもしていた。店のテーブルからはボイスレコーダーが張り付けられていたらしい跡も見つかる。女店主を殺したのは誰か、真っ先に疑われたのはヒモ同然の亭主だった。…


 『ショーウィンドウを砕く』の犯人の追い詰め方には痺れましたね~。お札に証拠が、ってのはもう、『エーミールと探偵たち』からもうずっと好きなパターンですよ、ってそれ以外に知らないけど(苦笑;)。香露園だのさくら夙川駅だの、馴染みの地名が出てきたのも嬉しかったし。
 『怪しい店』の最初に出てきた、ひょんなことから何を扱うのか分かった店、っていうのも妙にすっきりしました。「ふくよかな中年女性」が何だかマツコ・デラックスさんで思い浮かんでしまいましたわ(笑)。
 いや、どの話も「なるほど」と納得のいく話が多くて面白かったです。