読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

かがみの孤城 辻村深月著 ポプラ社 2017年

 ネタばれあります、すみません;

 どこにも行けず部屋に閉じこもっていたこころの目の前で、ある日突然、鏡が光り始めた。
 輝く鏡をくぐり抜けた先の世界には、似た境遇の7人が集められていた。
 9時から17時まで。時間厳守のその城で、胸に秘めた願いを叶えるため、7人は隠された鍵を探す――-
                                          (帯文より)

 中学一年生のこころは、クラスメイトの恋愛沙汰に巻き込まれ、登校できなくなった。「心の教室」というフリースクールにも、懇意にしてくれる喜多島先生に好意を持ちながらもなかなか通えず、お母さんともぎくしゃくしている。
 一人で留守番しているうち、ある日いきなり鏡が光り始めた。引っ張り込まれたそこは異世界、おとぎ話に出て来るようなお城の中に、同じ年頃の子供たちが集められていた。
 案内役の少女はクラシカルなドレスに狼の被り物、神出鬼没の怪しさで、来年の3月30日までにこの城の中に隠された“願いの鍵”を見つけた者の、願いを一つ叶えるという。
 アキはポニーテールの女の子。はきはきと喋る中学三年生。いかにも社交的だが押しつけがましい面もある。
 中学一年生のリオン、ハワイにサッカー留学をしている。幼い頃姉を白血病で亡くしていて、鍵を見つけて叶えたい願いは姉を生き返らせること。
 眼鏡をかけたアニメ声の少女、中学二年生のフウカ。シングルマザーの母親の期待に応えようと、全ての時間を犠牲にしてピアノに打ち込んできたが、今は伸び悩んでいる。
 同じく二年のマサムネ。城にゲームを持ち込んでいる。軽い虚言癖のために、クラスで浮いてしまった。
 スバルは祖父母に育てられている。素行の悪い兄に引っ張られるように、でも穏やかに荒れ始めている。
 ウレシノはとにかく惚れっぽい。それもあって、人から軽く見られる傾向がある。
 お互い、踏み込む度合いを探り合いながらの付き合いが始まった。
 電気は通っているのに水や火は使えない不思議、共有ルームや個人の部屋の所々に見つかる×印。逃げ場所を必要としていたこころたちはこの城に馴染み、だが現実世界での対処も進んでいく。タイムリミットも迫って、一人置き去りにされたようなアキは抜け駆けを計る。だがそれはこの城の崩壊と、仲間を巻き込んでの「狼に喰われる」結末を呼び起こした。
 ただ一人、ペナルティを逃れたこころは、今一度“願いの鍵”を探しにかがみの孤城に入る。願いでアキたちを救うために。…

 
 今から本当にネタばれしますからね。
 ええとね、これきっと時系列だよね、てのは結構最初の方で気が付くわけですよ。言ってしまえば、喜多島先生の正体も察しがつきまました。(あ、狼少女の正体にはさすがに気が付きませんでした;) でもね、面白いんですよ。ぐいぐい読んでしまう。
 スバルの「僕がゲームを作る人になったら、君は嘘つきにならないよね」の台詞には泣きそうになりました。
 現実ではこんなに上手く事は運ばないかもしれないけど、でもポプラ社刊、ってことはメインの読者は子供でしょうし。どうしても理解し合えない相手がいる(それが先生でも)という記述に、救われたように感じる子もいるんじゃないかな。
 まさしく、辻村さんならではの作品という感じでした。