読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

冬雷 遠田潤子著 東京創元社 2017年

 ネタばれになってるのかな、すみません;

 夏目代助はみなしごだった。産まれてすぐ、施設の前に夏目漱石『それから』の文庫本と共に捨てられていて、名前もそこからつけられた。11歳の時、とある旧家に後継ぎとして養子に入る。その町魚ノ宮町は、巨大な魚を鎮める催事が毎年行われており、代助も鷹匠として神事の一端を担うことになる。
 旧家は町の実力者として崇められ、煙たがられていた。学校でも一目置かれる代わりに一線を引かれる代助。彼と同じ境遇として、やはり催事を担う鷹櫛神社の一人娘 巫女を務める真琴がいた。
 惹かれ合う二人。だが決して結ばれることはない。しかし三年後、養父母に子供が生まれたことで、代助の立場が変わる。彼の役目は実子――翔一郎が成長するまでの繋ぎとなった。
 これで真琴と結ばれる、との考えは、代助には受け入れ難かった。産まれてずっとたらい回しにされる境遇に苦悩する代助。漸くその決意をした矢先、翔一郎が行方不明になる。容疑は代助にかけられた。
 旧態依然とした町で、代助に対する風当たりは厳しかった。鷹櫛神社の跡取りという話も立ち消えとなり、代助は高校卒業を待たずに町を出る。真琴と駆け落ちの約束をするが、真琴は待ち合わせ場所に巫女装束で現れ、代助は彼女がが自分より町を取ったことを悟る。
 11年後、鷹櫛神社の氷室で翔一郎の遺体が発見された。代助は葬式に出るため魚ノ宮町に戻る。今度は、真琴が容疑者として疑われていた。
 代助を慕い、ストーカーまがいのことまでして付きまとった挙句自殺した三森愛美、そのために代助を恨む愛美の兄・龍。あくまで代助を拒む真琴、そして養父母の間には、代助がいなくなった後でできた娘・結季が生まれていた。改めて、代助は翔一郎の死の真相を解き明かそうとする。…


 奥付を見て驚きました。出版されて半月で3刷? 売れてるなぁ。
 相変わらずの遠田節、不幸な境遇の主人公がとにかく辛い目にあいます。古い因習、周囲からの孤立、無理解。でも何か分かって来たぞ、結局主人公もヒロインも、そこから抜け出せるんだよな。ヒロインは変わらず健気で一途だし。勿論、主人公が幸せになるように願わずにはいられないほど、酷い目にはあってるんだけど。
 推理小説としては「うん?」でしたけど、遠田さんの作品はそこに主眼はない、ということで。そうそう、結季の年齢描写がなかなかなくて、映像がちゃんと浮かんで来なくてちょっと戸惑いました。確かに、結季の年齢は一つのヒントになるかもしれないことなんですど、でも読み難くなってしまうことは否めないんですよねぇ。
 表紙の挿画がいいですね、ちゃんと話の内容を則った上で可愛らしい。
 面白かったです。