読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

朱龍哭く 弁天観音よろず始末記  西條奈加著  講談社  2012年

 連作短編集、になるのかな、それとも長編のくくりなのかしら。
 ネタばれあります、すみません;
 
 はなれ相生
 南町の与力職を務めあげた榊安右衛門が殺された。以来、その娘・お蝶が何者かにつけ狙われるようになった。
 お蝶は安右衛門と馴染みの芸者・おきさとの間に生まれた娘。屋敷に迎えたいという安右衛門の生前の願いも、安右衛門の息子でお蝶の腹違いの兄・安之の意向もどこ吹く風、誰にも頼らず自活する、と柏手長屋で長唄を教えていて、器量の良さと気風の良さ、裏表のない性格から弁天にも例えられる小町娘。
 彼女の教え子、瀬戸物問屋伊藤屋のお久実が悪い男に引っかかった。何とか娘の目を覚まさせてやってくれとの両親の依頼、しかし話を聞いてみるとお久実はしっかり相手・達造の人柄を見極めて惚れている様子。見目のいい妹になびかず、お久実の辛さを自分の境遇に引き比べて思いやってくれたのだという。そのうち、お久実が誘拐された。御用達の看板を狙う商売敵の仕業か、それとも達造も関わっているのか。お蝶と兄嫁・沙十が乗り込む。

 水伯の井戸
 戸山陣内がお蝶の用心棒について五日。堅苦しい陣内の様子に、お蝶はいらいらして仕方ない。そんな時、水天長屋に幽霊が出る、表通りの店の前に泥が撒かれたり戸板に落書きされたりという嫌がらせをしてまわると言う相談事が持ち込まれた。地震の後、長く枯れていた井戸から名水が湧き出し始めた折も折、それが幽霊に関係しているのだろうか。

 手折れ若紫
 筆墨硯問屋、相華堂の娘・お琴の許婚・覚之助がお縄になった。袋物問屋・杉田屋の九歳の娘・お小枝に悪戯した咎だという。そのまま娘を嫁に貰ってもらえば罪には問わないと言う杉田屋、しかし覚之助は自分はそんなことはしないと言う。お蝶と沙十が話を聞きに行くと、お小枝の言うことに矛盾点は見当たらない。だが、どこか不自然だとお蝶は眉を顰める。

 一斤染
 お蝶の元へ紀津屋京兵衛と名乗る男が訪ねて来た。亡父・安右衛門の碁仲間だったと言う彼は、父との思い出話を語って帰る。縁が繋がったかのように、父に世話になっていたと言う夜鷹とも出会い、父の死に様を聞くお蝶。初めて聞く詳細に、お蝶は父の残したダイイング・メッセージの意味を悟る。

 龍の世直し
 金物問屋・旭屋の女房から相談事が舞い込んだ。夫が道場通いを始めたのはいいのだが、そこの妙な思想にかぶれ、御上への謀反を企てる仲間になっていると言う。火薬の原料・硝石の横流しもしているらしい。道場名を聞いてお蝶は驚く。そこは亡父とも馴染みがあり、幼なじみの升職人・千吉を紹介した的場道場だったから。そして今また、陣内がそこに出入りしていた。
 
 朱龍の絆
 千吉も陣内も、以前お蝶が暴漢に襲われた所を救ってくれた生臭坊主・雉坊もいなくなった。誰を信じていいかわからないお蝶は、長唄を習いに通っている菱垣廻船問屋、鳴海屋の四十次郎の言葉も素直に聞くことができない。心を汲んだ四十次郎は、父親と紀津屋と共に安之の家を訪れる。お蝶が狙われている原因となったものの正体を、実は紀津屋は知っているらしい。
 そんな折、お蝶の教え子がかどわかされた。代わりに、お蝶の身柄を寄こせと言う。

 暁の鐘
 安之が動かぬよう、人質として捕えられたお蝶。監禁先で陣内と出会い、陣内もまた、幼なじみの暴走を止めようと動いていたのだと知る。もう一人、安之の上司の娘も押し込められた所で、三人を救いに千吉が現れた。お蝶、陣内ともう一人、合流した沙十は、道場へと乗り込む。…


 ええと、するすると読めました。…としか言いようがないかなぁ。
 弁天お蝶はともかく、観音沙十の影が結構薄くてねぇ。二枚看板張るほどの活躍ではないような。
 読み切り短編を重ねた前半三編が、もうちょっと後半に関係して来たらよかったのに、本当に無関係だったんですね。その辺りも戸惑いの理由です。何か、風呂敷広げすぎた感じかなぁ。面白くなかった訳ではないのですが、西條さん、職人さんを扱った物語の方が作風に合ってるような気がする。