読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

小人たちの新しい家 メアリー・ノートン作/猪熊葉子訳 岩波少年文庫 1990年

 シリーズ最終話。英国での出版は1982年。

 気球に乗ってプラター夫妻の屋根裏部屋から何とか逃げ出したアリエッティ達。しかしようやくたどり着いたリトル・フォーダムも、安住の地ではありません。与えられた居心地の良い環境を是としないポッドは、その日のうちにリトル・フォーダムを抜け出すことを実行。間一髪、その日の夜、プラター夫妻はリトル・フォーダムを襲い、町をアリエッティ達を探して家々を壊していました。
 スピラーの助けを借りて、アリエッティ達は古い牧師館に移り住むことになります。元々牧師館には、同じ借り暮らしやの少年 ピーグリーンが住んでいました。足を悪くして一族から置いてきぼりを食らってしまったピーグリーンは、読書を楽しみ、詩を書き、絵を嗜む芸術家肌。そして近くの教会には、猟番小屋で一緒に住んでいた、ヘンドリアリおじさんの一家が移り住んでいたのでした。
 ようやく軌道に乗ったかと思われた新しい生活。しかし、アリエッティ達の前に、再びプラター夫妻が現れます。夫妻は教会で、ヘンドリアリの小さな息子 ティミスを見つけてしまいました。募金箱に逃げ込んだティミスを追って、プラター夫妻は夜の教会に忍び込みます。…


 何十年も経ってから出版された最終話は、果たして面白いんだろうか、と少々意地悪く読み始めました。アシモフファウンデーションシリーズだって、後期の作品は前期三部作の輝きが失われていたように感じたし、このシリーズ自体、前作のラストは、「これで終わり」という決意を持ったような終わり方でしたし。
 でもまぁ、読んでみると楽しかった。色々なものを工夫して居心地のいい部屋を作っていく様子は、小さい頃のお人形遊びを思い出して懐かしかったです。イギリス児童文学の特徴というか、細部に物語が宿る設定。幽霊が当たり前のように出てくるのもいかにもイギリス。で、教会に住んだせいで妙に宗教にかぶれていくルーピーおばさんの描写の意地悪さ(苦笑;)。
 ただ、文章だけでは部屋なり何なりがどういう状況なのか、どうしても把握し辛くはあったのですが。…これ、挿絵なしで普通に読んだだけで、イギリスの子供たちは理解できるのかしら。やっぱり環境の違い??
 前作の終わりではアリエッティはスピラーといずれ結婚する、みたいな書かれ方でしたが、今回を見る限り、ピーグリーンの方が有力候補のような気がしないでもない。
 ただ、「めでたしめでたし」って雰囲気では決してないんだよなぁ。確かにこんな生活、続けて行くのはしんどそうです。