読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

O・ヘンリ短編集(一) O・ヘンリ著/大久保康雄訳 新潮文庫 1969年

 短編集。

警官と讃美歌
 ソービーは冬の三か月間、暖かな刑務所で過ごしたかった。食い逃げやら器物破損やら女性への嫌がらせやら、色々試してみたが上手くいかない。やがて出くわした教会で、ソービーに改心の機会が訪れる。

赤い酋長の身代金
 ごく潰し二人が、町の有力者の一人息子誘拐の計画を立てた。誘拐自体はとても簡単、でもその子供はインディアンごっこにとにかく夢中、手を焼く腕白振り。

振子
 妻との平凡な毎日に飽き飽きしているジョン。だがある日、家に帰ってみると妻の姿がなかった。母親が倒れた、との電報に実家に戻ったらしい。ジョンは初めて、妻の大切さを思い知る。…妻が帰って来るまでは。

緑の扉
 ルドルフ・スナイダーが街角で受け取ったチラシには、「緑の扉」と書かれていた。ほかのチラシは歯医者の宣伝だったのに! ルドルフは手近な建物に飛び込み、そこの緑の扉を開けた。

アラカルトの春
 サラーはフリーランスタイピスト、サラーの間借りしている部屋の隣の家にあるレストランで、メニュー打ちの仕事を得ている。昨年の夏、田舎で知り合ってプロポーズまでされたウォルターからの手紙を待ちわびている彼女の元に届いた献立表には「卵を添えたタンポポ料理」――愛しいウォルターとの思い出の花が。サラーは思わず泣き伏してしまう。

運命の衝撃
 叔父と意見が合わなかったばかりに、勘当されて無一文になってしまったヴァランス。公園で、明日には資産家の叔父の財産が転がり込む、と言う浮浪者に出会う。突然の幸運に落ち着かない浮浪者に付き添うヴァランス。果たして翌朝、弁護士の元に行ってみると…。

ハーグレイブズの一人二役
 トールボット少佐は古い古い南部の出だった。娘と共にヴァーデマン夫人の下宿に住み、同じく下宿人の舞台俳優ハーグレイブズと親しくなる。貧しい生活の中、偶然入った劇場では、ハーグレイブズがトールボット少佐そっくりの南部老人を滑稽味たっぷりに演じていた。馬鹿にされたと憤慨するトールボット少佐。ハーグレイブズが差し出すお金にも見向きもしない。決してそんなつもりではなかった、と主張するハーグレイブズは、金を受け取ってもらうために一計を案じる。

善女のパン
 ミス・マーサ・ミーチャムは小さなパン屋の女主人。いつも固くなった古パンの塊を買っていく紳士が気になっている。貧しい暮らしをしているに違いない彼の為に、ある日彼女はパンにこっそり、たっぷりのバターを塗り込んでやった。

ラッパのひびき
 億万長者のノークロスが、彼のアパートで強盗の為に殺害されてから二週間後。バーニー・ウッズ刑事は昔馴染みのカーナンと出会う。カーナンが犯人だと確信するウッズ。果たしてカーナンは犯行を認めたが、その昔ウッズに貸した一千ドルを盾に、逮捕を拒否。調子に乗ったウッズは「自分が犯人だ」と有名新聞社に電話までかけてみせた。

よみがえった改心
 ジミイ・ヴァレンタインは腕のいい金庫破り。刑務所暮らしを務めた後、さらに二、三の仕事をして、ジミイはある田舎町で銀行家の娘に恋をする。まっとうに生きる決心をするジミイ。その娘の心も射止めた矢先、その娘の姪っ子が、金庫の中に閉じ込められてしまった。娘やその父親の真ん前で、彼は扉を開くのか。彼を追って来た刑事も目の前にいるというのに。 

自動車を待つ間
 小公園で本を読んでいる、地味だが優雅な婦人が一人。彼女に声をかける青年がいた。上流階級での暮らしを語る彼女に、惹かれる様子の青年。だが彼女は、青年の職業を聞いてあたふたと去ってしまう。

多忙な仲買人のロマンス
 株式仲買人のマックスウェルは今日も忙しい。新しい速記者を雇おうと思っていたことも忘れてしまうほど。だって自分にはミス・レズリーがいるじゃないか。美しく聡明な彼女は、今日は何だか幸福そうだ。何かいいことがあったんだろうか。

黄金の神と恋の射手
 金でできないことはない、と豪語するロックウォール老。息子のリチャードは、そんなことはない、現に恋する彼女と会うこともできない、と反論する。劇場までの馬車の中の数分間を、二時間にも引き延ばす秘策とは。

桃源境のの短期滞在者
 ブロードウェイの片隅にある、優雅な隠れ家的ホテルにて。夏の休暇を過ごしていたマダム・ボーモンは、一人の青年と出会う。上流階級の者同士、意気投合する二人。やがて最終日、マダムは一つの告白をする。

御者台から
 いい加減酔っ払った御者のジュリーは、ある夜、一人の若い女性を乗せる。散々ドライブを楽しんだものの、女は金など持っていない、と言う。ジュリーは怒って警察に駆け込んだ。

水車のある教会
 かつて、水車小屋にて、幼い娘が行方不明になった過去を持つエイブラム。長じて資産家になった彼は、この水車小屋を教会に作り替える。そこに、一人の娘が休暇を楽しみに訪れた。

 解説として「O・ヘンリの生涯と作品」…

 
 この間読んだ『古書カフェすみれ屋と本のソムリエ』で紹介されていて、何となく借りてみた一冊。でも実際作品の中に出て来たのは『短編集(二)』の方だったんですけど、でもまぁ、読むなら最初からということで。
 子供向けに翻訳されたものをついこの間にも読んでいまして、だから結構重なってる作品もありましたね。こうやって読んでみると、ある程度のパターンもあるかもしれない。知り合った二人がお互い嘘をついているとか、とある出来事をすっかり忘れているとか。
 『赤い酋長の身代金』なんかはドタバタコメディの基本のような話だし(『トムとジェリー』にも似たような話があった気がする)、嘘が嘘を呼んで、という展開になるとこれはもうシチュエーションコメディの原型ですね。幸せな結末になるものもあれば不幸に終わってしまうパターンもある。さぁ、いざ、という時によってひっくり返される展開。
 最後27ページも費やして紹介されている、作者の波乱万丈な生涯も凄かった。アメリカの人はこんなにも転々とするものなんだろうか。それとも、この時代ならではなんでしょうか。