読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

マボロシの鳥 太田光著 新潮社 2010年

 爆笑問題太田光 初の短編小説集。

 荊の姫
 塔の上に閉じ込められた、荊で覆われた少女の話。彼女を世話する白髪の老婆と共に、彼女を抱きしめられる人を待つ。その人が彼女を解放してくれる筈だから。

 タイムカプセル
 65年前、島に爆弾を落とした若者・ポール。世界を終わらせたかった彼はシェリーと出会い、ローズという娘を得る。未来へ繋がる、守るべき存在はやがて、自分の伴侶を連れて来た。ポールには認められない、かつての自分と同じ目をした青年は、ローズと共に島へと戻る。そこにはまだ、ポールの落としたタイムカプセルが生きていた。

 人類諸君!
 絶滅の瀬戸際まで追いつめられた人類は、大博士・風間奇一朗の演説を待つ。その頃、地球の片隅、名も無き小島ではかつての天敵同士が手に手を取り合っていた。

 ネズミ
 「ネズミ」と呼ばれた少年は、皆が美しいと思うものを美しいと思えず、醜いと言われるものしか気を惹かれなかった。ひねくれた見方をするネズミは皆から嫌われ、描く絵も好かれはしなかった。そのネズミに、悪魔が目を付ける。

      何となく星新一の作品を思い出しました。「お前死ね」で終わるショートショート
      あれ、好きだったんだよな~。

 魔女
 タバサは魔女として火刑にかけられようとしていた。その時彼女に見えていたのは、やはり魔女として処刑された母と、お気に入りだった白いドレス。汚され、破かれて「元々好きではなかった」と思い込もうとしていたドレス。

      タバサのお母さんの名前はやっぱりサマンサなのかしら(笑)。

 マボロシの鳥
 満員のオリオン劇場で、魔人チカブーは自分の胸からマボロシの鳥をを出してみせた。誰もが“一番見たいもの”だと感じ、この先を生きるよすがとなるような美しい鳥。だが、業突く張りの支配人の手違いで、その鳥は劇場の窓から逃げてしまい、チカブーは二度とその芸ができなくなった。年老いてすっかり落ちぶれたチカブーに、少年の頃その芸を見た男たちが語りかける。
 一方異世界で、タンガタと言う名の青年が幻の鳥を捕まえていた。後々、国の指導者となったその青年は、やがて自分の得たものを「持ちすぎた」と思うようになる。

 冬の人形
 冬子は父親に、男手一つで育てられた。無骨で不器用な父は冬子にぎこちない態度で接し、却ってその娘・春子を甘やかし、可愛がった。まるで自分を育てなおしているようで、冬子はいたたまれなかった。

 奇蹟の雪
 砂漠の町で、アザミはハムザに爆弾を渡される。知的障害のある幼馴染の少女二人に、その爆弾を仕掛けろと言われる。

 地球発……
 銀河鉄道に乗って、ぼくは向かいの座席に座った老人に、キミの話をする。星の瞬きを笑い声だと言ったキミの話を。そして老人はぼくに、彼の友人の話をしてくれた。…


 爆笑問題の太田さんが小説を出す、と言う話を聞いたのは、確かタイタンシネマライブが最初だったと思います。太田光ともなると新潮社が乗り出すんだなぁ、妙なことに感心した覚えが…。いや。オードリーの『小声トーク』出版の時も「講談社が動くのか!」と驚いたんですけどね。
 何かね、他の芸人さんとかの作品とは、始まった所と言うか目指す所と言うかが違うような…。コントや芝居を小説に移すのではなく、文字でしか表現できないもの、が大前提。
 読書家で知られる太田さんが、自分の好きな作家さんの作品を、自分と言うフィルターを通して書き直した感じ。太宰治向田邦子宮沢賢治、サン・テクジュペリ。そしてまぁ、その視線の優しいこと。全く、ろまんちっくだねぇ(笑)。
 作品そのものではなく、その後ろに透ける太田さんを見ている気がしています。結局私は爆笑問題のファンなので、公正なジャッジはできないんですよね~。困ったもんだ(苦笑;)。