読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

炎のタペストリー 乾石智子著 筑摩書房 2016年

 ネタばれになってる気がします、すみません;

 隣国と長い戦争を続けるハルラント聖王国の最西端“西ノ庄”の少女エヤアルは、5歳のとき、魔法を暴走させて森と山を丸々焼き尽くす、という災厄を招き“炎の鳥”に魔法を奪われた。8年後、徴兵吏によって砦に連行された彼女の中で、不思議な力が目を覚ます。聞いたもの、見たものをそっくりそのまま覚えているという能力は、喋る祐筆として訓練され、国王の元に送られた。
 エヤアルの望みは常に「故郷に帰りたい」その一点、だが公明正大な国王ペリフェ3世やその弟で火炎神殿騎士の美丈夫カロルなど、前向きに意欲を持って国を治めようと進む彼らに、協力してやりたいと思ったのも事実だった。渋々ながらも遥か東<太陽帝国>の都ブランティアへ、表向きは巡礼として赴き、そこで各国の言葉や礼儀作法を覚えることになる。
 豊かで活気あふれる文化都市ブランティアに目を見張るエヤアル。日々の暮らしや街の様子を国王に書き送る。それが何のためなのか、薄々分かっていながらもあえて見ないようにしていたエヤアルは、ある日ブランティアに攻め込んで来るハルラント連合軍の姿に激しく後悔する。連合軍は美しい街を破壊し、略奪の限りを尽くした。
 エヤアルはブランティアでできた友人と共に、船で街を逃げ出す。乗り合わせた中には旅の途中で知り合った火炎神殿騎士・レヴィルーダンや、彼に守られた<太陽帝国>皇子もいた。行く先は火炎神殿のあるアフラン国、だが火炎神殿の神官長・ニバーが、予言をすることでペリフェ3世を焚き付け、幼いエヤアルの後始末をし、今またエヤアルや<太陽帝国>皇子の居場所をペリフェに売ったことを知って、ニバーを信じることはできない、と確信する。果たしてペリフェは、エヤアルに再び強大な魔法を手に入れるよう、火炎神殿に祀られている炎の鳥に乞えと命令した。
 エヤアルの“力”をめぐって世界に戦火をもたらす陰謀が動き出す。謎の予言者ニバーは裏で何を画策しているのか、エヤアルの精いっぱいの抵抗は彼女の命を削っていく。ぽっかり抜けたエヤアルの中の「魔法」の跡、そこに溜まっていったのは彼女の経験を積み重ねた、様々な色合いの糸。エヤアルはその糸で、彼女の望みを叶えるためのタペストリーを織り始める。…            (紹介文を参考にしました)


 異世界がメインの話で、女の子が主人公、ってのは珍しいな、と思いつつ。
 「わたしは強情だけど、意固地じゃないわ」  何度か繰り返される台詞が印象的でした。
 でも主人公エヤアルが掴み切れなくてねぇ; 激情型、突っ走って思い込んで、ってタイプじゃないし、天然思い遣り系でもなく、冷静沈着計算高い訳でもなく、その混合。ブランディアで屋敷に閉じ込められて、何とか逃げ出さなきゃ、と小間使いのブルーネを引き入れようとする場面とか、どの感情がメインなんだろう、と思ったり。レヴィルーダンへの恋を即座に諦めようとする潔さとか、ペリフェからの命令に抗おうとする強さとか、ニバーへの嫌悪感を露わにする直截さとか。
 心の中に糸玉が溜まっていく表現、最後にそれを織り上げて行く描写にはうおお、さすが、と思いました。
 彼女の願いはいつまで保たれるのか。「これで済むのか?」とちょっとあっけない気もしましたが、何しろテーマ大きいからなぁ。