読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

大川契り 善人長屋 西條奈加著 新潮社 2015年

 『善人長屋』シリーズ3冊目。連作短編集。

泥つき大根
 お縫の五つ上の兄、倫之助が養子に行った茶問屋 玉木屋の大おかみ・お杉が、若い男に入れ揚げているという。きっと金目当てにおかみに近づいたに違いない、と会ってみるとこれが泥つき大根のような野暮ったい男、しかも堅気ではない臭いがする。夜盗一味が玉木屋を狙っていて、男はその手先ではないか。だが長屋の住人で地蔵のような善人・鍵職人の加助は、すっかり気があった様子で、勿論疑いもしない。目を着けられてしまった玉木屋を救うには。

弥生鳶
 伝説の掏摸「弥生鳶」が復活した。だがその手口の粗さに、弟子筋の安太郎は疑問を抱く。とても同一人物の仕業とは思えないのに、仲間内では安太郎が二代目を襲名したのでは、と噂が立っている。濡れ衣を晴らそうと、安太郎は長屋のみんなと「弥生鳶」を罠にかける。

兎にも角にも
 加助が梅蔵という男を拾って帰ってきた。荷車の下敷きになって足を痛めたのを、面倒見てやるのだと言う。たまたま近くにいた佐野屋の主人の、意匠を凝らした杖も借りてきた様子、だがこの男、千鳥屋に空き巣に入って、質草等を盗んで行ってしまった。しかもその中には、お縫が預かった盗品もあった。

子供質
 路銀を盗まれたというお女中が、幼い坊やを置いて出て行ってしまった。五日後には必ず帰るとの言葉、だがその子供はとにかくやんちゃで始末に負えない。しかも体中火傷や痣で覆われている。女中はその子が不憫でとにかく親元から離したかったらしい。この子はどこの子なのか、長屋の皆で調べに掛かる。

雁金貸し
 お縫には、十離れた姉がいる。姉・お佳代は嫁に行ったきり、実家千鳥屋の裏稼業を嫌って里帰りをしていない。だがお縫は義兄の次吉から、お佳代が借金した上証文詐欺にあったことを知る。代筆業を営む梶新九郎に、お縫は詐欺のからくりを解いてくれるよう頼む。

侘梅
 唐吉がこの頃、夜になると出かけて行く。弟の文吉が後をつけてみると、武家屋敷が立ち並ぶ一角で侍と逢引していた。どこのお武家様なのか、文吉はショックを受けながらこっそり調べ始める。

鴛鴦の櫛
 加助が拾って来た瀕死の男・駒吉の最期を看取り、通夜や葬式まで出した千鳥屋。だが後日、駒吉の兄・武三が現れて、駒吉が持っていた筈のお宝がない、と言い出した。千鳥屋儀右衛門は妻・お俊と娘・お縫を人質に取られ、そのお宝を隠した場所を吐け、と言われる。身に覚えがないながら、必ず見つけ出す、と啖呵を切る儀右衛門。お俊はお縫に、傲慢だった自分の過去を語り、夫と馴れ初めを明かす。

大川契り
 お宝の場所を探り出そうと、お縫は武三たちにお宝を得た詳しい経緯を尋ねる。二年前に大店から盗んだ一千五百両、御上に追われててんでんばらばらになり、結果駒吉が隠した場所に、その金子がなかったのだとか。駒吉が残した辞世の句と合わせて、お縫は何とか謎を解こうとする。…


 何か妙に安定感出て来た気がするシリーズ三冊目。
 「これは無理があるんじゃないか?」という作りの話もないことはないんですが、ああ、なるほど、と思う作品も増えてきた気がします。(←えらそーに;)
 加助が連れて来たのではない騒動も、今回ちらほらあったような…。
 お縫と文吉が思い思われ、って感じに次からなるのかな。まだまだ続きそうですね。