読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

まったなし 畠中恵著 文芸春秋 2015年

 『まんまこと』シリーズ第5弾。

まったなし
 西松家支配町からの祭りの寄進が集まらない。西松家の支配は町名主を継いで間もない16歳の哲五郎、その相談に乗るために麻乃助にまでとばっちりが回ってきて、忙しいことこの上ない。西松家手代・辰平にも小言を言われる中、新たに長屋の夫婦の喧嘩の仲裁と、吉田屋おときに狐が憑いているという中傷への後始末、という揉め事が飛び込んで来た。

子犬と嫁と小火
 あちこちで子犬が行方不明になっているらしい。見つかったとしても飼い家からはえらく遠い町で、しかも小火も頻発している。若い男が子犬を探し回っていたという情報も飛び交い、麻乃助は二つの出来事の関連に眉を顰める。

運命の出会い
 真っ暗な道を幼馴染の清十郎と歩いていると、大江と名乗る男と知り合った。よくよく考えてみると、自分たちが何故この場にいるのかも判らない。やたら舟に乗せたがる大江、思い返してみると自分たちは流行病に罹って寝込んでいたではないか。麻乃助たちは大江から、何とか逃げ出そうと算段する。

親には向かぬ
 高利貸し丸三のお妾・お虎に、幼い子供・万吉が預けられた。依頼主は麻乃助、病床の質屋の跡目争いに巻き込まれている万吉を、守ってやれるのは危ない橋を渡ったことのある丸三だろうというのだ。果たして、父親ともども上方に逃がそうとする計画に、伯父の手が伸びてきた。

縁、三つ
 婚礼用の白無垢に、染みが付いたとの言い立てがあったらしい。本来は町名主が支配しなければいけないこの案件を、書役の正吾が勝手に裁定してしまった。仕立てを頼まれたお真知は元々花嫁の恋敵、だが仕事は仕事で染みなどつけていないという。麻乃助は改めて事件を調べ始める。

昔から来た文
 清十郎の縁談がまとまりそうだ。だがお相手のお安に、清十郎の元カノから連名で誹謗の手紙が届いたと言う。二の足を踏むお安、だが調べてみると元カノたちはそれぞれ逞しく今を生きている様子、そんな文を寄越した気配はない。お安の周囲をうろつく怪しげな男に気付いた麻乃助は、それが清十郎の義理の母、お由有をかどわかした男だと思い当たる。…


 麻乃助の親友・清十郎の縁談話が底にずっと流れていた一冊。
 前の話をあまり覚えていなくてですね(←こらこら;)、お由有さんの子供の父親の正体とか前も触れられてましたっけ、今回初めて明らかにされたと思うんですが。
 過去のあの状況で麻乃助が踏ん張っていれば、お互い好きな者同士一緒になれた筈。でもあそこで麻乃助に覚悟を決めろ、というのはちょっと可哀そうな話だよなぁ、そりゃ無理だよなぁ、と妙に納得しました。だからこそ麻乃助は度量の狭い自分をずっと後悔し続ける訳ですが。
 とりあえずお安さんは気立ても頭もいい人みたいなので、清十郎は安泰ですね。ただそれで達三郎がどう動くのか、このままおとなしく引っ込むとは思い難い。次の巻はその話がメインになるのかな。