読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ハケンアニメ! 辻村深月著 マガジンハウス 2014年

 アニメ業界を舞台にした長編。
 ネタばれになってるかも、すみません;

第一章 王子と猛獣使い
 九年前、伝説の魔法少女アニメ『光のヨスガ』を撮って以来、沈黙を守っていたアニメーション監督王子千晴。既にこの業界に入っていた有科香屋子の心も鷲掴みにされ、以来この監督と仕事をする、ということが香屋子の念願になった。
 いよいよプロデューサーとして監督を口説き落とし、深夜アニメ枠を確保した途端、王子が失踪する。フォローに駆け回る香屋子、周囲は王子を降板させろと合唱するが香屋子にはどうしても踏ん切りがつかない。王子は戻って来るのか、新作『運命戦線リデルライト』は完成するのか。

第二章 女王様と風見鶏
 家が貧しく、小さい頃好きにTVも見られない環境で育った斉藤瞳。精一杯勉強して有名大学の法学部に入り、公務員を目指していた大学二年生の時、野々崎努監督の長編アニメ『ミスター・ストーン・バタフライ』を見て、瞳は衝撃を受ける。それこそ、自分の進路を変えるほどに。
 老舗アニメ会社トウケイ動画に入った瞳は下積みの後、いよいよ初監督作品を撮ることになった。『サウンドバック 奏の石』、略して『サバク』。古き良きアニメ枠、夕方5時放送。視聴率を取ることを条件付けられ、スポンサーの意向等様々な制約の中での作業の中、色々と噂のあるプロデューサー行城理とタッグを組んで、瞳は駆け抜ける。

第三章 軍隊アリと公務員
 新潟県選永市のアニメ原画スタジオ『ファインガーデン』で原画マンとして働く並澤和奈。下請けとして『リデルライト』や『サバク』の仕事を受け、特に『サバク』の方で神原画マンとしての評価を高めつつある。
 『サバク』の舞台が選永市だったことから、市が『サバク』を利用した観光誘致を計画し始めた。スタンプラリー、祭りへの参加、イベント、関連グッズと話を持ちかけて来るいかにも人付き合いのよさそうな担当者・宗森周平に、和奈は反感を抱く。

最終章 この世はサーカス
 王子千晴、斉藤瞳、並澤和奈の次回作や『リデルライト』『サバク』の結末が語られる。…


 雑誌「anan」でアニメを題材にした小説の連載かぁ、時代は変わったなぁ。
 う~ん、物凄い疾走感。第三章のアニメでの町おこし的な話になるとちょっとペースダウンした気味はありましたが(いや、私の題材への関心が薄れただけかも)、それまではとにかく熱い。いや、それでも舟を流す場面ではちょっと胸が熱くはなったのですが。
 覇権アニメ、という言葉は初めて知りました。確かに友人との間で、「今季はあれが面白かった」みたいな話はするんですが、それに名称がついていたとは。う~ん、不覚(笑)。
 不肖一アニメファンとして気になるのは、作中作品の、モデルになっただろうアニメが何か、ということで。トウケイ動画は東映アニメだよね、夕方5時枠で気を吐いてるのって言ったらMBS毎日放送製作だし、香屋子が惚れ込んだアニメって何だろう、辻村さんの年齢から考えたら『美少女戦士セーラームーン』がど真ん中か??と首を捻りつつ。『ヨスガ』は多分、それこそ『美少女戦士セーラームーンR』から『少女革命ウテナ』への流れだろうな、と予想してたら巻末の謝辞で幾原邦彦監督の名前があったので、やっぱり、と頷いてしまいましたよ(えっへん・笑)。
 冒頭にあった香屋子の証言、思わず録画ボタンを押す、という行為は何だか凄く良く分かりました。いや、私はやらないんですけどね、その分も画面から目を離すのが嫌だから、内心で「しまった、録っときゃよかった」と歯噛みしながら見続ける、という(苦笑;)。あと、下手な自治体参加はファンの反感を買う、という和奈の意見にも深く同意しました、さすが、辻村さん(笑)。
 作中作の『リデルライト』や『サバク』は実際、見てみたいと思いましたね~。辻村さん原作でやらないかしら。『サバク』の、結末をしっかり描かないという手法は、何となく『魔女の宅急便』を思い出したり。
 そうそう、表紙画がCLAMPさん。…辻村さん、若いな~(笑)。