読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

残月 みをつくし料理帖  高田郁著 ハルキ文庫 2013年

 『みをつくし料理帖』シリーズ8冊目。

残月――かのひとの面影膳
 又次がいなくなって最初の夏。その現場に居合わせた札差・摂津屋はつる屋を訪れ、又次の最後の言葉の真意を知りたい、と澪を問い詰める。その年江戸では疫痢が流行り、幼い子供達の命が多く失われていた。元から腎臓を悪くしていた小松原の母親も亡くなったこともあり、澪はお盆に精進料理の膳を出すことを提案する。

彼岸まで――慰め海苔巻
 戯作者清右衛門が連れてきた絵師の辰政が、太一の描いていた絵を目にして自身の絵手本を置いて行った。辰政が細工包丁に興味を持っていると知って、お礼も兼ねて大根の鶴細工を作る澪。だが怪我した左手の後遺症もあって満足な出来にならない。ただその鶴が切っ掛けになり、客として来た元吉原の新造・しのぶが、佐兵衛と思われる男の現況を語る。大雨の日、出水を心配して漸くつる屋に様子を見に来た佐兵衛は、澪に登龍楼には関わるなと言う。

みくじは吉――麗し鼈甲珠
 登龍楼から澪に引き抜きの話が来た。断った成り行きで新しい料理を考えることになった澪。源斉の計らいで野江と語らえた澪は、野江の差していた釵をヒントに卵料理「鼈甲珠」を思いつく。

寒中の麦――心ゆるす葛湯
 料亭・一柳の柳吾の幼馴染みの婚礼の仕出しを、澪は引き受けた。その夜、息子の坂村堂と言い争いをした柳吾は激昂のあまり心臓発作で倒れ、芳はその看病を頼まれ奔走する。
 一方、清右衛門からあさひ大夫と澪の関係を聞いた種市は、澪をつる屋から出す決意をした。

 つる屋の味醂料理に舌鼓を打つ男の正体は‥掌編『秋麗の客』収録。…


 漸く順番が回ってきましたよ、『みをつくし料理帖』第8弾。
 今回の特筆事項は佐兵衛再登場でしょうねぇ。再会できてよかったのですが、もう結婚して子供もいるようで、澪と一緒になって天満一兆庵の再興を、という展開は無理な様子。それどころか料理人の道にももう戻らない、とのこと。登龍楼との間に何があったのやら。
 ただ、澪の独立については周囲の準備が整って来ています。又次の訓等を受けたふきは澪を手伝えるようになっていますし、種市は澪を手放すことを決めました。芳も柳吾のプロポーズを受ける様子です。でもりうさんが又次の死について語った「亭主が死んだ時より辛かった」にはちょっと笑ってしまいましたよ(苦笑;)。
 最後の掌編はキッコーマンとのコラボ作品のようで。…こぼれ梅もいずれ売り出されるのかしら。
 裏表紙にあるように、「希望溢れる」展開になった今回。次巻に続きます。