読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

心星ひとつ みをつくし料理帖  高田郁著 ハルキ文庫 2011年

 『みをつくし』シリーズ6冊目。

青葉闇――しくじり生麩
 大坂で食べた生麩を思い出し、自分なりに作ろうとした澪。だがどうも思うようにいかない。ヒントをくれたのは常連客の坂村堂、だがその試作品を食べた小松原は、店に出すのはやめた方がいいと言う。坂村堂は実は料亭「一柳」の一人息子だった。

天つ瑞風――賄い三方よし
 翁屋の楼主 伝右衛門から改めて、澪は吉原への出店を打診された。同じ時期、登龍楼店主 采女宗馬からも、神田登龍楼を居抜きで買わないか、との話が持ち込まれる。自身の望む所を見つめ直した澪は、一つの結論を出す。

時ならぬ花――お手軽割籠
 小火が続いたため、火の扱いを控えるよう元飯田町一帯の飲食店に御触れが出た。澪は、弁当を供することを思いつく。一方、つる屋の前で行き倒れて以来、澪に料理を習いに来ていた武家の奥方・早帆は、自分の兄に嫁入りして来ないかと澪を誘う。早帆の兄とは、小松原のことだった。

心星ひとつ――あたり苧環
 小松原からのプロポーズを受けて、嫁ぐことを決めた澪。だがそれは、天満一兆庵の再建も野江の身請けも、人に料理を供することすら諦めてしまうことだと、澪は気付いてしまう。…


 小松原の「俺の女房殿にならぬか」の台詞に、思わず一旦頁を閉じて天を仰いでしまいました。いやぁ、くすぐったくて顔がにやけるにやける(笑)。こんな言葉を、時代小説で聞けるとはねぇ!
 色々な道が澪の前に提示される一冊。澪が望みさえすればどんな道でも拓けるのに、澪は結局現状維持を選びます。澪自身は迷っているのですが、でも読者から見たら澪の一番の幸せがどこにあるのか、一目瞭然なのに。そしてこの思いを、りうを除けば、源斉先生が一番良く理解している気がするんですが。
 ただ、料亭『一柳』の主人 柳吾の「ひとは与えられた器より大きくなることは難しい」ってのはその通りで、それを越えようと思ったら、途轍もない努力が必要になるのは確かなんですよね。どうしても現状に甘えちゃうから。多分澪はやってのけるんでしょうけど。
 次巻に続きます。