読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

イン・ザ・ヘブン 新井素子著 新潮社 2013年

 短編集。

イン・ザ・ヘブン
 死の床に就いている今日子さんの介護をしている史子。今日子さんからの質問「天国って、あると思う?」の質問に何とか答えるけど、今日子さんの質問はますます難易度を増すばかり。でも、答える。天国は今日子さんにとって、万全の対応をしてくれる筈。神様は、特別扱いをしてくれる筈。

つつがなきよう
 「人口総和理論」が発表されて以来、子供の欲しい人間は、殺人を犯しまでするようになった。当然、荒廃する世界。ゆっくりと下り坂を下りるように。ある一人の学者の思惑に乗って。

あけみちゃん
 あけみちゃんは、保育園のもも組さんです。とてもいい子のあけみちゃんに、神様は願いの叶うドロップを三つくれました。でもいい子のあけみちゃんは、それを自分のためには使いません。代わりにあげたお友達の願い事は、結構難しいことで…。

林檎
 猫のウェコが林檎を見て鳴いているように、飼い主の美穂には思えた。林檎が欲しいのかしら? でも本当にウェコが伝えたかったことは…。

ここを出たら
 地震が起きた。その時エレベータの中にいた人達は、暗闇の中でパニック寸前。そんな中、静かに、的確にリーダーシップを取った男が一人いた。

ノックの音が
 致死率77パーセントのウィルスキャリアになってしまったあたしたちは、巨大な病室に隔離されている状態。だから、致死率97パーセントのウィルス兵器が使われた時も、あたし達は無事でいた。さて、外からノックの音がする。

絵里
 小さい頃から施設に預けられて育った絵里。今の時代、それは珍しいことじゃない。だけど何故か今さら実の両親と同居することになった。両親と会うために、おばあちゃん先生と妹の留津と都会のホテルに行ってみたら、そのホテルがテロにあってしまった。爆煙が立ち込める中、絵里たちは配管の中を逃げることにする。

幻臭
 会社の同僚の死体を発見して以来、悪夢を見るほどにうなされている。猫のぬいぐるみ型セクレタリー・ロボット、リナとの間に溝を感じるくらい。 

ゲーム
 神様は、自分を信仰する者以外を滅ぼすことにしました。但し、せめてもの慈悲として、自分の死に方を選べるようにお告げしたのです。所が情報文化が発達した人類は、一筋縄では行かなくなっていました。この“ゲーム”を楽しみ始めたのです。

あの懐かしい蝉の声は
 生まれつき障害者だったあたしは、手術で「第六感」を手に入れた。「第六感」――それはネットに接続できる感覚。でも、この手術は大成功、過ぎたらしい。…

テトラポッドは暇を持て余しています
 ある日心にふと浮かんだ言葉『テトラポッドは暇を持て余しています』と関連した不思議な出来事のエッセイ。…


 この人は、本当、自分を削って作品にしてるよなぁ。
 「ゆるやかに人口が減って人類が衰退していく」コンセプトの、何と多いこと。自分の体験すら作品に昇華してみせる見事さ、哀しさ、強かさ。
 今回の作品には、あとがきに曰く、「無意識とのセッション」も何作か含まれるそうで。確かに、思いつくままに書いて行って、まとまった作品ができるというのは凄い。大概、途中で収集つかなくなっちゃうだろうに。
 そして、やっぱり。新井さんの文章には、どうしても影響されます(苦笑;)。