読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

『風立ちぬ』を語る 宮崎駿とスタジオジブリ、その軌跡と未来  岡田斗司夫 FREEex著  光文社新書  2013年

 『風立ちぬ』は、宮崎駿監督の最高傑作です。正直、ここまでの作品に仕上げてきたのは、僕にとってまったく予想外でした。しかし、「音も映像も素晴らしい! 主人公たちの愛に感動しました!」なんてことが理由ではありません。僕が感動したのは、主人公たちのいびつな愛情だったのです――。(第一章より)

 長編映画からの引退宣言をした、宮崎駿最後の作品『風立ちぬ』。宮崎駿が初めて大人向けに作ったこのアニメをめぐり、賛否両論巻き起こっている。
 アニメ会社ガイナックス創設者、オタク評論家で知られる岡田斗司夫は、本作品をどう読み解くか――。その他ジブリ作品もひもときつつ、宮崎駿という人間、アニメ作家としての巧みな技術力、今後のジブリの展望に迫る。
                                    (表紙見返しの紹介文より)

 岡田さんが映画『風立ちぬ』の評論本を出した、と新聞広告で知って、ちょっとHPを覗いてみました。以前はちょこちょこ見に行ってたのですが、この頃忙しくてご無沙汰してたんですよね。そしたら案の定、映像の方でも『風立ちぬ』について語ったものをアップしてらっしゃって、で、全部ではありませんがそちらも拝見しました。
 本書の内容はほぼこれに沿ったものでしたね、それに加えて過去に同人誌や何かで発表されていた内容も要所要所に挟んで。

 …そうか、メフィストフェレスかぁ。
 例えば、これが漫画だったら。堀越二郎がついた嘘や心情など、行間やコマから読みとったかもしれない。(それだけのリテラシーがある、と信じたいなぁ;) でも今回の映画について語られる、「綺麗なものにしか興味が無い」二郎の姿は、すみません、私は読みとれませんでした; ええ、ですから泣いてもいませんとも。
 二郎の思いが、最初菜穂子ではなくお絹に向いていた、というのはさすがに気が付きましたが、その後の菜穂子への「初めて会った時から」みたいな発言が悪気のない嘘、つまりは二郎の人間性、人物造形だとは気付かず、「…あれ?」と戸惑うばかりでした。…そうか、悪意ない薄情者なんだ。そう取ったらしっくり来たんだ。
 『火垂るの墓』の臓腑を抉る解説もついてましたね。(苦笑;)
 
 以前友人が、『千と千尋の神隠し』は宮崎駿庵野秀明へのメッセージに思える、と言っていたのをふと思い出しました。お前がやりたいことはそれでは伝わらないよ、やるならこうやらなきゃ、と言うお手本に見える、と。

 でも私は、かつて『魔女の宅急便』で号泣したんだよなぁ。後半話がバラバラになってしまってるのは判ってるんだけど、キキの自信がぐらつく様と、もがいてあがいての再生に。