読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

残り全部バケーション 伊坂幸太郎著 集英社 2012年

 連作短編集。

第一章 残り全部バケーション
 両親が離婚して私・早坂沙希は高校の寮に入る、明日から家族はばらばら。そんな最後の夜に、父親の携帯電話に入って来た奇妙なメール一件。
 『友達になろうよ。ドライブとか食事とか』
 怪しむ沙希を余所に、父親も母親も大乗り気。メールの相手・岡田と連絡を取り合って、本当にドライブに出かけることに。岡田は今の仕事を辞めたいと思っていて、その条件が「適当に送ったメールの相手と友達になること」だったらしい。 

第二章 タキオン計画
 岡田が溝口と組んで仕事をしていた頃。
 父親に虐待されている少年・坂本雄大と、岡田は知り合いになった。父親の暴力を何とか止めさせる方法はないか、他人の忠告には耳を貸さないタイプの人間には、自分自身からの話は聞くのではないか。岡田は一計を案じる。

第三章 検問
 溝口が太田と組んで仕事をしていた頃。
 毒島からの命令で、女を拉致して盗難車で目的地へ向かっていたら、検問にあってしまった。どうやらどこぞの国会議員が刺されたらしい。いい加減な話で警官を煙に巻く溝口。だが後々、その車のトランクからとんでもない額の札束が見つかる。警察官は何故自分たちを見逃したのか。三人の推理とまでいかない想像は、真実らしいものに突き当る。

第四章 小さな兵隊
 岡田が小学四年生だった頃。
 クラスメイトの岡田君は問題児らしい。女の子のランドセルに落書きしたり、校門脇の塀を青いペンキで塗ってみたり。でもスパイの仕事で長期出張中のお父さんは、その話を愉快そうに聞く。そして、「弓子先生のこと、気をつけろ」と電話口で僕に告げる。果たして学校向かいのスーパーマーケットの屋上で、学校を覗いていた男の存在も確認できた。僕たちは弓子先生を守れるか。

第五章 飛べても8分
 溝口が高田と組んで仕事をしていた頃。
 軽率で考えなしの溝口に、高田はちょっと辟易している。今日もいきなり勝手に当たり屋を演出して、失敗して車に轢かれてしまった。大腿骨骨折で入院した病院には、脅迫状を警戒した毒島も滞在しているらしい。VIPルームで快適に過ごす毒島を狙っているのは誰か。…

 
 初出一覧を見ると、この短編全て違う雑誌に掲載されていた様子。…すごい、よく繋がってるなぁ。
 前の話にちらっと出て来るエピソード、映画監督になった友人がいるとか、サキさんの食べ歩きのブログとか、犯罪で役割を分担するとか、各章それぞれで独立しているのにちゃんと関連してる。読んでて何だか嬉しくなってしまいました。
 岡田にしても溝口にしても、決して褒められる仕事をしている訳ではないのにとにかく魅力的。第一章以外は読後感も爽やかで、とにかく面白い。しかも最終章に第一章のフォローが来る。流石伊坂さんですよ、全く。
 ただ、表紙は何なんだろう。雪山で働くケンタウルス(?)だったり釣り師だったりペンギンだったりのジオラマで、何だかよく分かりませんでした、どういう意味合いなのかしら。
 それにしても、浮気する男が沢山出てきたなぁ。