読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

共和政の樹立 小説フランス革命Ⅷ  佐藤賢一著  集英社  2012年

 8月10日の蜂起、9月虐殺、王へ下される審判。
 暴走する殺戮の刃。ルイ十六世、断頭台へ。
 流血の先は天国か、地獄か。                            (帯文より)

 
 蜂起は成功した。テュイルリ宮殿から王一家を追い出し、勢い付く貧困層サン・キュロット。落ち目になるかと思われたジロンド派もダントンと手を結ぶことで盛り返す。だが蜂起で多大な犠牲を払った民衆たちは血に酔ってしまった。止まらない虐殺にダントンもロベスピエールも慣れきり、その態度にデムーランは疑問を抱く。
 オーストラリアへの勝利、停戦はダントンの密かな活躍によるもので、だがジロンド派内部告発によりダントンは不正を追及され一時失脚。ロラン夫人の思惑をよそに、王が隠し持っていた秘密文書「鉄箱文書」がうかうかと公表されジャコバン派が台頭、とうとう王の死刑が決まる。…


 池上彰推薦、の文字も踊るこのシリーズ。歴史学者の人から見たら「何故同じ過ちを繰り返すんだ」と思うことは現実に多々あるそうで、今回も確かにどこかで見たような政争が繰り広げられています。国事はまるで動かず、相手の粗さがしばかりに現をぬかす議員たち。いい加減にしろよ、と言いたくもなるよなぁ。
 連載されている所為もあるんでしょうが、今までの経緯が折に触れ簡単にまとめられているのが有難い限り。そうそう、こんな流れだったわ。…でもフィヤン派ってどんなのだったっけ(←こらこら;)。 
 ルイ16世が何だかとにかく魅力的に描かれています。わざと偽悪的にふるまい、自分一人が死ぬことで家族へ害が及ぶのを防ごうとする。でも血に酔った民衆の勢いは止まらない訳ですね。虐殺のみならず、ミラボー伯の墓まで暴いて、ってくだりはぞっとしました。こんな町では安心して暮らせないよ、奥さん子供は田舎に避難させた方がいいと思うなぁ。
 次巻に続きます。