読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

小説 火の鳥 大地編 上・下 桜庭一樹著/手塚治虫原案 朝日新聞出版 2021年

 手塚治虫による「火の鳥 大地編」構想原稿を元に、桜庭一樹が書いた「火の鳥」続編。…桜庭さん、勇気あるなぁ;
 この作品をお気に入りの方は、この先を読まない方がいいと思います;
 ネタばれあります、すみません。

1938年、日本占領下の上海。若く野心的な關東軍将校の間久部緑郎は、中央アジアシルクロード交易で栄えた楼蘭に生息するという、伝説の「火の鳥」の調査隊長に任命される。
資金源は、妻・麗奈の父で、財閥総帥の三田村要造だという。
困難な旅路を行く調査隊は、緑郎の弟で共産主義に共鳴する正人、その友で実は上海マフィアと通じるルイ、清王朝の生き残りである川島芳子、西域出身の謎多きマリアと、全員いわく付き。
そこに火の鳥の力を兵器に利用しようともくろむ猿田博士も加わる。
苦労の末たどり着いた楼蘭で明らかになったのは、驚天動地の事実だった。

間久部緑郎の義父で、三田村財閥の総帥でもある要造は、猿田博士が手にした強力な自白剤により、みずからの来歴を緑郎ら「火の鳥調査隊」に語り始める。
そこで明かされたのは、火の鳥には現代の科学では考えられない特殊な力が存在しているという驚くべき事実だった!
すでに日本国政府は、要造率いる秘密結社「鳳凰機関」の協力のもと、火の鳥の力を利用し、大東亞共栄圏に向けて突き進んでいるという……
国家のためか、あるいはみずからの欲望のためか。

漫画『火の鳥』や手塚作品に数多く登場する猿田博士やロック、マサトたちと、東條英機石原莞爾山本五十六ら実在の人物たちが動かしていく。
戦争に邁進する近代日本の姿を描きながら、人間の生と死、愚かさと尊さを余すところなく描いた歴史SF巨編。
朝日新聞「be」連載時から話題沸騰。大幅な加筆による完全版!
                     (出版社紹介文より)

 まず最初の、登場人物紹介が邪魔で;; ロック、正人、猿田はともかく、あとの映像はこちらに委ねてほしかった。少なくとも私は、男装の麗人に和登サンとか、美形の京劇役者にサファイアとか、絶対に重ねない。というかサファイアは王女であって、誰にも仕えないんだよ!(←偏見)
 桜庭さん、おそらく普段よりも漫画的なセリフ回しや表現を多用していて、それを私の中で漫画に変換すると、どうしても一昔前の手塚漫画になってしまう。劇画ブームに圧されて必死で修正する前の。そうじゃない感がどうしても頭の中から抜けなくてですね、話の内容を素直に受け入れることができませんでした。
 登場人物のアタマが悪そうに見えたのも辛くて、いや、もっと理知的な人出てこいや! 同じ過ちを繰り返すのも人間の業でしょうけれど。
 原爆に火の鳥の亡骸を重ねるラストは流石、と思いました。エピローグもそれっぽかった。
 最後の、手塚治虫直筆の構想原稿に胸をつかれました。

 私には、本当に好きになったものは原理主義になるという傾向があって、つまりパロディ等を認められなくなります。それでも随分寛容になったと自分では思っていたのですが、これはちょっと…だったなぁ。いっそ、色々な作家さんに、トリビュートで書いてもらうとかした方がよかったんじゃないかしら。
 自分の心の狭さが出ました;