読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

鋼鉄の叫び 鈴木光司著 角川書店 2010年

 ネタばれになってるかも、すみません;

 時はバブルが崩壊した1994年。プロデューサーの雪島忠信は、終戦50周年記企画番組を企画している。テーマは特攻、できれば自分の意思で命令を拒絶し生き残った一兵卒。そんな人物を主役に据えたいと思っていた矢先、恋人の倉沢菜都子から一通の葉書を渡される。文芸同人誌で、まさにそんな境遇の兵士を描いた小説を書いた人物がいるという。九州まで作者に会いに行った雪島は、主役にモデルなどいない、と取材を拒否される。だが、それにしては、描かれていた状況はあまりにもリアルだった。
 作者がインスピレーションを得たらしい鹿屋の航空基地史料館で、雪島は大きな手がかりを得る。当時、見学に来ていた修学旅行生の中に、特攻隊員の遺影を見て「おじいちゃん」と呼びかけた女生徒がいたというのだ。兵士の名は峰岸泰三中尉。奇しくも雪島の父親の、命の恩人でもある人物だった。
 戦時中の日本の精神構造と、雪島の今の境遇がリンクする。人妻である菜都子との恋愛を成就させる方法、泥沼に入った状況に解決のヒントを与えてくれたのは、峰岸の生き方だった。…

 
 鈴木さんの文章は妙に熱くて、私にはちょっと苦手な文章だったりします。自分に酔ってるんちゃうん、とか何となく引いてしまう所があって芯からのめり込めなかったり。ただ、命がけで奥さんや子供を守る、というテーマは大体の作品に共通していて、まぁこの基本姿勢がある限り、鈴木さんの作品は嫌いにならないだろうな、と思ってました。そしたらこの前の作品から、やたら不倫だの浮気だの出てくる感じで、…鈴木さん、どうしたんだろう; 今回は旦那さんとの仲がすっけり冷え切ってしまった人妻がお相手でした。色々状況だの理由だのは書かれてるんですが、やっぱりあまり感心はしないなぁ(苦笑;)。
 とはいえメインは特攻隊員の話、こちらはするすると読み易かったです。峰岸さんの正体もここに繋がるのか、と意外でした。
 そうそう、離婚して半年以内にできた子供は前の旦那の子になるんじゃなかったっけ、そのあたりのこと雪島さんはどう考えてるのかな。