読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

高原のフーダニット 有栖川有栖著 徳間書店 2012年

 社会人アリスシリーズ。中編3本収録。
 ネタばれになってるかも、すみません;

 オノコロ島ラプソディ
 淡路島で休暇中、火村助教授は殺人事件に巻き込まれたらしい。廃品回収業の男が自宅で撲殺され、その捜査協力を依頼されたとのこと。被害者に金を借りていた人物が数人、しかしみんなアリバイがある。しかも最有力容疑者はその晩一緒にいたのが元刑事だとか、その上宝くじまで当たって動機すら無くなってしまった。現場に駆け付けたアリスと共に、火村はアリバイ崩しにかかる。
  
 ミステリ夢十夜
 吹雪の中、山小屋に避難したアリス達四人。眠気防止のため、壁伝いに一人ずつ歩いて隣の人の肩を叩く、という作業をしているうち、アリスはある矛盾に気付いてぞっとする。
 味覚障害の男ばかりが6人集まった食事会に紛れ込んでしまったアリス。変な味のスープを、アリス以外の人物は飲みほしてしまう。
 福男を選ぶ行事に参加しているアリス。周りを見渡すと見知った顔が多数参加している。トラップの仕掛けられた参道を、本殿に向かってひた走る面々、これは何の暗喩なのか。
 担当編集者を殺したと疑いを掛けられたアリス。アリスにはちゃんとしたアリバイがある、でもそれは語れない。大勢の人の夢を守るためにも。
 雪で閉鎖された村で起きた殺人事件、火村はどうやら真相に気付いたよう。しかしそれが村人に悟られ、二人は夜中、山中を逃避行することに。
 おかしな夢を見る、とアリスはカウンセリングに訪れる。ビルの28階で、窓の外を横切る影に気が付くアリス。医師は錯覚だと片づけるが、アリスは確かに見ている。
 某国大統領のSPについているアリスと火村。折も折、人工衛星の破片が今にも落ちてくるかもしれないという緊張感の中、大統領はいたって呑気にオープンカーに乗っている。果たして、暗殺者が現れた。
 迷宮館に招待されたアリスと火村。次々に起きる殺人事件、火村は犯人が判ったと言うが皆を集めることがどうにも難しくて…。
 名探偵の悪口を言う小学生を誘拐する、<たそがれ仮面>なる怪人が跋扈しているらしい。寸での所まで追い詰めたものの、アジトは既にもぬけの殻。でもアリスにはある疑惑が…。
 銀行のATM前で、引き出した金をすぐまた戻している男女二人連れがいた。その不審な行動を火村に報告すると、火村はすぐ警察に連絡する。その行為の意味する所は。

 高原のフーダニット
 双子の弟を殺してしまった、警察に自首するつもりだ、と火村に電話がかかって来た。父親からの遺産相続で揉めてしまった結果らしい。ところがその人物――大朔栄輔は他殺死体で発見された。自分が動いていれば、と後悔する火村。栄輔の死体は自宅で、弟の光輔の死体は墓地近くの洞穴の中で見つかったらしい。栄輔は光輔を殺したことで誰かに強迫されていた様子、しかし殺害現場は簡単に誰かに見られるような環境ではない。栄輔を強請っていたのは誰か。…


 本格にリアリティなんかいらないよね、と素直に楽しめてしまいました。『オノコロ島ラプソディ』なんて、なんのためにそこまでするやら。…まぁ、嘘吐かないためなんだけど(笑)。
 そういえば有栖川さんて叙述トリックの作品あまりないんでしたっけ。私は読む分には叙述トリック大好きです。綾辻さんとか第一人者になるのかしら、あっという間に違う世界に放り出される快感。違う視点から見る、ということが好きなのかもしれません。
 ある意味奇想天外な掌編を集めた『ミステリ夢十夜』、論理の効いた、すっぱり割り切れる真相『高原のフーダニット』。でもこの被害者の双子はすっかり忘れていました; …ええと、以前出て来てたっけ??(←おいおい;)
 あとがきに曰く、火村は使いべりがしないそうで。え、じゃあ江神先輩は減るの?(笑) でもまぁ、火村先生にも社会人アリスにも会えるのは嬉しいことです。