読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

Happy Box 友清哲編集 PHP研究所 2012年

 ペンネームに「幸」が付いた5人の作家が紡ぐ「幸せ」についての物語。

 Weather/伊坂幸太郎
 女性関係の華やかな友人が、結婚することになった。しかも相手は自分が高校生の頃の彼女。当たり障りのない話題を、とお天気ネタに終始する大友は、でも徐々に追い詰められていく。イタリアンレストランでのウェディングにしたのは新郎の意志か新婦の希望か、食い違う証言の中にどうも見え隠れする人物の存在。大友にはそれがどうも友人の昔の彼女に思えてしまう。

 天使/山本幸久
 ショッピングモールで、福子は同業者に出会った。どうも自分をカモだと思ったらしい、男の子を使って財布を掏ろうとした男。反対にその男の財布を掏ったら、その後、子供の方が話しかけてきた。男は子供の母親のつれあいで、男の子とその姉に掏摸を強要していると言う。

 ふりだしにすすむ/中山智幸
 でっぷり太って白いあごひげをたくわえた老人が、ある日いきなり現れた。「ぼくね、きみの生まれ変わり」。到底自分が存命中に、しかも年上の人間に言われる台詞ではない。石樺と名乗る老人は、自分は多喜田りりこの生まれ変わりで、先日他界した妻は大庭かおると言う人物の生まれ変わりである。二人は前世で友人同士だった筈なのに、実際はまだ出会っていない、これでは来世で自分と妻が巡り合えない。二人が出会うセッティングをすると言う。訳が分からないまま、結局りりこは大庭かおると会ってしまう。帽子作家としてイギリスに留学するかどうか、迷っているかおるに。

 ハッピーエンドの掟/真梨幸子
 昭和46年、アイコは小学五年生。ママは離婚した後ホステスとして働いていて、家には所狭しとカラーテレビや洗濯機やクーラーにロッキングチェアが並び、水槽にエンゼルフィッシュも飼っている。ママは忙しくてあまり一緒に食事もできないけれど、店屋物は美味しいし、ママと二人でアイコは十分幸せなのに、周りの人はそう思っていない様子、「お父さんが欲しいさびしがり屋」のレッテルを貼られて困惑している。

 幸せな死神/小路幸也
 ついうっかりウィスキーをこぼしたら、それが死神にかかってしまっていたらしい。お酒を供えて召喚したことになるとかで、榎本帆奈の傍には死神が付き従うことになった。とはいえ死神にも仕事はあり、気づくとふらりと帆奈のの前に現れている状態。いつしか礼儀正しく気のいい死神の存在にすっかり慣れてしまった帆奈。帆奈の「死神の幸せとは」の問いに、死神は「誕生に立ち会うこと」と答える。…


 伊坂さんの新刊だと思って予約したら、アンソロジー本でした。…久しぶりだなぁ、アンソロジー読むの。
 伊坂さん以外読んだことのない作家さんばかりだったのですが、いやぁ、どれも面白かったです。ハズレなかったなぁ、するすると読めました。
 こういうのは、普通は雑誌とかの企画である感じのものではないのかしらん、と思いつつ。今までに書いたものからではなく、書きおろしですもんね。解説での編集者の言葉に、作家さんとの良好な関係が見えるようで、微笑ましい限りでした。
 この頃は同人誌でも「アンソロジー」と呼ばれるものが存在するらしいよ、とこの間友人たちから聞いたばかりでして。私は読むだけになってしまって久しいのですが(「読み専」というらしい)、どうやら原稿料的なものも発生するらしいよ、という言葉に「へぇ」を連発。昔は「ゲスト本」って言ったよね、自分の本に寄稿して貰う、ってことで。…でそこでちょっと気になって。
「そのアンソロジー本って、勿論主宰者も書くんだよね?」
「いや、それがそうでもないらしいのよ」
…編集するだけ?? そりゃ原稿料が発生しても仕方ないかもなぁ。
 いや、関係ない話ですみません;