読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ブラックペアン1988 海堂尊著 講談社 2007年

 『バチスタ』シリーズ、スピンオフ作品。

 一九八八年、世はバブル景気の頂点。「神の手」をもつ佐伯教授が君臨する東城大学総合外科学教室に、帝華大の「ビッグマウス」高階講師が、新兵器を手みやげに送り込まれてきた。
 「スナイプAZ1988」――この新しい医療器具を使えば、困難な食道癌の手術が簡単に行えるという。腕は立つが曲者の外科医・渡海が、この挑戦を受けて立つ。
 スナイプを使ったオペは、目覚ましい戦績をあげた。佐伯教授は、高階が切った啖呵の是非を問うために、無謀にも高階抜き、若手の外科医のみでのオペを命じる。波乱含みの空気のなか、ついに執刀が開始された。そして起きるスナイプの操作ミス、大出血。高階が駆け付けて事なきを得たものの、佐伯は外科技術の重要性を高階へ思い知らせる。
 佐伯の心酔者が増え、いよいよ病院長の席が近付く中、渡海だけは佐伯の医師としての根本的な適性に疑問を抱いていた。学会で佐伯をはじめほとんどの医師が出張中のある日、渡海はある患者の緊急手術を高階に申し入れる。患者はかつて、佐伯が執刀し渡海の父親が関わった因縁の患者だった。…
                                    (紹介文に加筆しました)


 おお、何だかこれは『振り返れば奴がいる』の世界みたいだぞ(笑)。
 面白かったです。ただ、頭の中に疑問符は残りましたけど。
 最初、患者の体を、ひいては命をどう思ってるんだ??という言動の数々に眉を顰めることしきりでした。いや、お医者さんにとっては数多ある症例の一つでしかないかもしれないけど、どの患者も自分にとっては一大事なんですけど。最後、佐伯教授の真摯な啖呵はあったものの、でも患者を実験台に使うような指示を、この人した訳だしなぁ。
 見覚えのある名前も沢山出て来ましたね。田口先生や速水先生、垣谷先生。猫田看護婦に花房看護婦、藤田婦長。この頃は「婦長」だったんですよね。でも今回の語り部の世良先生に覚えはなかったなぁ。これから出てくるのかしら、忘れてるだけかしら;
 失敗を人に押し付ける関川先生の態度はちょっとハラ立ちましたね。手技とかの問題ではなく、性格的にお医者さんになっちゃいけないんじゃないのかなぁ。偉そうな態度取っても周囲が許すのは、最終的な責任を全て引き受ける立場だからでしょう。
 誰でも簡単に手術が行えるようになること、それが技術の低下を招く。どちらの主張も分かる。永遠のジレンマですね。
 渡海先生も、いずれまた出て来そうだなぁ。