読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

妖精作戦 笹本祐一著 創元SF文庫 2011年

 1984年、ソノラマ文庫から出版された作品を刊行しなおしたSFジュブナイル

 夏休みの最後の夜、オールナイト映画をハシゴした高校二年の榊裕は、早朝の新宿駅で一人の少女に出会う。小牧ノブ――この日、彼の高校へ転校してきた同学年の女子であり、超国家組織・SCFに追われる並外れた超能力の持ち主だった。彼女を守るべく雇われた私立探偵・平沢の奮闘むなしく、ノブは榊ともどもさらわれてしまう。榊の友人・沖田と真田は後を追い横須賀港に停泊する巨大原潜に侵入する。
 結局見つかって軟禁されるものの、原潜に向かって飛んできたヘリ・ハリアーのハイジャックを敢行。乗っていたのがノブ奪還に向けて潜入を試みた平沢と密航していたクラブメイトのつばさで、丁度いいとばかりに逃走を試みるが今度は燃料切れで失敗。連れて来られた先は赤道直下のアレキサス諸島海底に作られたSCF本拠地、そこからノブはシャトルで月基地へ飛ばされるという。
 おとなしくしていられる訳がない。5人はノブのシャトルに乗り込み、とうとう月基地まで。そこでSCF設立の目的を知る。第二次世界大戦以降増えたUFOの目撃情報、エイリアンは核を覚えた地球人を宇宙に出すまいと妨害を始めている、宇宙人に対抗するには超能力部隊でも作成するしかない、ひいては小牧ノブにも協力を仰ぎたい。
 そんなことは関係ない。ノブが嫌がってるなら地球に連れて帰るのみ。UFOが飛来し月基地が攻撃される混乱に乗じて、榊たちはシャトルジャックする。目指すは地球。しかし、追撃の手は勿論緩むことはなかった。…
 歴史を変えた四部作開幕。
                                  (前半部分、裏表紙の紹介文を写しました)


 有川浩レインツリーの国』の元ネタになった作品。勿論、解説も有川さんが担当。熱気が伝わって来る名解説でした。
 笹本さんというと、私の中では『ARIEL』。…と言っても読んだ訳ではなく(ごめんなさい;)、当時流行りはじめたメディアミックスの先駆け的な作品だった記憶があるということで。アニメにはなったんだっけ、カセットブックは覚えてるんだけど。確か水谷優子さんとか林原めぐみさんとか、今で言うアイドル声優的な人達が多数参加していたと思うんですが。
 なるほど、これは中高生の心を掴むわ。文章は決して上手くないし(作者もあとがきであえて直さなかったと書いてました)、説明は不十分なんだけど。バイクだの兵器だの、専門用語を羅列して「とにかく凄いんだ」と思わせるワザ。「これを分かるようになりたい!」と思った読者は、きっと自力で知識を増やしていった筈。…私はもうそこまでの熱意は持てませんが(苦笑;)。
 これはないだろう、という引っかかりもとにかくハイスピードな展開ですっ飛ばす。でも私はもう大人になってるのでどうしても疑問は持ってしまうのですが。…SCF、何でノブの誘拐に走るんだ?? 始めから事情を説明して説得するべきでしょう、仲間もいることだし、どうやら後々榊たちを振り切ってそちらに与するらしいし。そもそも、ノブの親はどうなってるんだ??
 読んでて連想したのが『最終兵器彼女』や新海誠のアニメ『ほしのこえ』。あれらは、ノブがそちらの世界に行ってからの話なのかな、とふと思いました。
 とりあえず四部作最初の一作目です。