読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

空飛ぶ広報室 有川浩著 幻冬舎 2012年

 連作短編集。

 不慮の事故でP免になった戦闘機パイロット空井大祐29歳が転勤した先は防衛省航空自衛隊航空幕僚監部広報室。待ち受けるのは、ミーハー室長の鷺坂(またの名を詐欺師鷺坂)をはじめ、尻を掻く紅一点のべらんめえ美人・柚木や、鷺坂ファンクラブ1号で「風紀委員by柚木」の槙博己、鷺坂ファンクラブ2号の気儘なオレ様・片山、ベテラン広報官で空井の指導役・比嘉など、ひと癖もふた癖もある先輩たちだった……。有川浩、渾身のドラマティック長篇小説。
                                     (紹介文より)
 
 帝都テレビの因幡リカは、報道記者から一転、ディレクターに左遷された経歴を持つ。元々自衛隊音痴の上、その苛々を広報室の面々にぶつけてしまう幼さに、鷺坂室長は空井を専任担当させた。人気俳優主演の社会派ドラマへの救難ヘリ撮影協力依頼を通じ、因幡の頑なさも和らぎ、空井も自分の挫折と漸く向き合い始める。:『1.勇猛果敢・支離滅裂』

 戦闘機に人気タレントに乗って貰って、航空自衛隊への理解を深めてもらおう! 空井の書いた企画書は当初とは別の形で実るかと思われた。そこに鷺坂の待ったがかかる。広報としての線引きはどこか空井は思い知る。:『2.はじめてのきかくしょ』

 発想力は抜群だが仕事が粗い片山一尉と、性格と同じく穏やかで安定した仕事をこなす比嘉一曹。数年前二人で組んで、人気アイドルユニットのPVに関わり、成功させた実績がある。二人して切磋琢磨して行くんだ、と勝手に思っていた片山は、出世志向のない比嘉に一人失望している。そんな時持ちあがった野外フェスタへの参加企画、片山は一人で成功させてやる、と息巻くが…。:『3.夏の日のフェスタ』

 女を捨てている残念美女柚木三佐。学生の頃、剣道部で女を捨てる前の彼女を知っている槙三佐には痛々しくも見えてしまう。男社会で肩肘を張ることでしか自分を保てなかった柚木。彼女に同調できたのは因幡リカだった。:『4.要の人々』

 自衛隊のCMを作る季節。救難をメインに据えて苦労して作ったフィルムがお蔵入りになったあと、起きた企画はドキュメンタリー方式で、というもの。亡き父の後を継いで整備士になった娘を取材して作ったCMは、だが思わぬところから避難を受けた。:『5.神風、のち、逆風』

 今をときめく人気アイドルグループ『宙(ソラ)』の初冠番組、初回放送特別企画、メンバーの5人をブルーインパルスに乗せよう! 鷺坂室長の異動も決まった、成功させて室長の餞としよう。広報室が一つにまとまる。:『6.空飛ぶ広報室

 あの日、空井は松島基地にいた。因幡は二年ぶりに松島を、空井を訪ねる。:『あの日の松島』


 春からドラマも始まるそうですね。撮影には快く全面協力したのかしら(笑)。
 相変わらずテンポよく読める一冊、でも一番心に刺さったのはやはり最終話でした。…実話は強いわ;
 そうか、自衛隊員救援物資も使わないんだなぁ、使ったら何言われるか判らない立場なんだなぁ。確かにそこまで律さなければ、横領しようと思ったらいくらでも横領できる立場になってしまうんだもんなぁ。
 自衛官も普通の人間に変わりない。有川さんの自衛隊本は必ずそこに触れますね。