読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

化物園 恒川光太郎著 中央公論社 2022年

 連作短編集、になるのかな。
 ネタばれあります、すみません;

 猫どろぼう猫
 上田羽矢子は三年前から空き巣に入るようになった。公園近くの家に泥棒に入った帰り、いきなり老人に襲われる。
 老人はかつて狐谷というところで、子供を化物に喰われたのだとか。ケシヨウと呼ばれるそいつをようやく追い詰めた、この公園が餌場だという。老人の狂気は、空き巣に入った家主と別れ話がこじれた女や、たまたま通りあわせた羽矢子の同級生を巻き込んでいく。

 窮鼠の旅
 久間王司は42歳。働かず、実家で父親と二人で生活している。ある日、父親が死んでしまった。死体を一室に閉じ込めて生活するうち、家に何かが棲みつく。家から逃げ、あてもなく家を出る王司。海辺で出会った女に、一日千円で納屋と食料をあてがって貰う生活を始めた。

 十字路の蛇
 小さいころ住んでいた田舎町の商店街に、ウェスタンハットの初老の男が座り込んでいた。不気味な老人だと思った「私」は、その男をこっそり〈蛇〉と呼び、同級生の家庭の不幸を〈蛇〉の仕業ではないかと口走ってしまう。大人になって町を訪ねてみると商店街はすっかり寂れていて、さらに数年後、「私」に〈蛇〉から電話がかかってきた。〈蛇〉は言う「おまえはおまえのしたことで全てを失う」。「私」の無責任な推測は、〈蛇〉の周囲に波紋を起こしていた。

 風のない夕暮れ、狐たちと
 〈お手伝いさん募集〉の求人広告に応募した「私」たえ。ダメ男から逃げ出そうともがいていたたえには、田舎の屋敷への住み込み勤務は好渡りに船だった。雇い主の奥様は息子の文と二人暮らし。どうやら依頼内容には、社会生活に向かない息子の世話まで含まれていたらしい。衣食住全てが保証された、心穏やかな夢のような生活、だがたえはある日いきなり解雇された。再び戻った苦しい生活の中、たえは奥様への憎悪を募らせる。

 胡乱の山犬
 武蔵国の村で、「私」は〈残虐〉を身の内に抱いて育った。衝動を堪えられず弟を殺そうとして果たせず、「私」は洞窟に閉じ込められ、後に人買いに陰間茶屋に売られる。その間も〈残虐〉がやむことはなかった。やがておりくと名乗る女に気に入られたことを切っ掛けに、茶屋に火を放ち共に逃げるが、おりくは段々成長する「私」に嫌気がさして来る。「妖怪がいる」との噂のある山に連れ込まれて殺されかけ、そこで何故か〈残虐〉は姿を消した。私は人に乞われるまま、山中にはケシヨウという妖怪がいる、と作り話をし始める。

 日陰の鳥
 チャンパ王国の緑の目のリュクは言葉がわからない。町の子供たちに苛められる毎日、ある日町はずれの屋敷に住む老婦人が、ダウォンという怪物であることを知る。老婦人の導きで山上寺院に住むことになったリュク、そこには三つ目の少女や双頭の少年、肌が鱗の少年などが聖なる存在として、薬を作ったりお札を書いたりしていた。三つ目の少女には予言の能力があり、この国の未来を予測するが、王も将軍も都合のいい面しか見ない。やがて、黎朝大越国と戦争になり、チャンパ王国は滅亡する。少年少女たちも自決する中、リュクは遠い国を目指す。

 音楽の子供たち
 高い塀に囲まれた屋敷で育てられた子供たち、不思議な箱や扉を、いちいち課題をクリアしていくことで開けていく。やがてピアノを習熟した少年 陽鍵は、同じように異なる楽器を弾きこなす子供たちと出会った。彼らを導く風媧の望むまま、楽器を演奏する12人の子供たち。だが陽鍵は、自分たちが閉じ込められていることを知る。ここを抜け出すには、風媧を殺すしかないのではないか。不慮の事故等で仲間が死んでいく中、陽鍵はこの世界を壊すことを考え始めた。…

 ダメ人間が続く展開に、頁をめくる手が止まりそうになりました。嫌悪感がじわじわ積み重なって行く、こういうのは心が元気な時に読まなきゃだめだな(苦笑;)。特に2編目の『窮鼠の旅』がキましたね~、死体処理しなかったらどうなるかぐらい分かるだろ、せめて埋めろよ(←おいおい)。話が進んで、設定が日常から離れていくにつれてラクになりました。最終話までいくと読後感よかったもんなぁ。
 化物ケシヨウのエピソードが、過去に遡って書かれているということでしょうか。最後の話でまた未来に戻る。ケシヨウ、チャンパ王国から琉球通って来たのね~。
 あちこちで見かける猫がちょっと怖くなるような話でした。