読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

狼と香辛料ⅩⅥ 太陽の金貨〈下〉  支倉凍砂著/文倉十イラスト  メディアワークス電撃文庫  2011年

 『狼と香辛料』シリーズ最終巻。
 ネタばれあります、すみません;

 鉱物商・デバウ商会によって新貨幣が発行され、自由と希望の町となるレスコ。ロレンスはその町で、ホロと共に店を持つことを決めた。
 しかしその矢先、ホロとロレンスの前にコルの頭陀袋が投げ出される。彼らの眼の前に現れたのは一羽の白兎。理知的な瞳を持ち、言語を話すその兎は、デバウ商会の会計人ヒルデ・シュナウと名乗る。ヒルデ曰く、あまりにも強大になったデバウ商会は分裂の危機にあるのだとか。新貨幣発行による利益と鉱物の採掘を、貴族や領主は自分達の領土拡大のための北方侵攻の理由にし、欲に目のくらんだ商人もその案に乗ったらしい。
 金と武力を結びつけてはならない。それでは力の支配する旧来の世界と変わらない。ヒルデは鉱山発掘の技術書、ホロやロレンスが以前関わった禁書を手に入れることで、今回の出兵の意味をなくそうとしていた。
 ホロはロレンスと別れて、禁書を手に入れるためキッシェンへ。その間、デバウ商会ではとうとう急進派が行動を起こす。深手を負ったヒルデはロレンスの宿を訪れて、北の町スヴェルネルへ協力を要請する手紙を届けてくれ、と依頼してくる。
 これ以上デバウ商会の内紛に巻き込まれる訳にはいかない。今なら知らぬ存ぜぬで白を切り通せる。ルワード率いるミューリ傭兵団と共に町を出たロレンスだったが、瀕死のヒルデの言葉「手紙を残して来た」に凍りつく。もし自分達の名前が入っていたら、急進派の追手がかかるだろう。南の平野に逃げればすぐに押し潰される、北の山間部に向かわなければ命も危うい。ヒルデの策に驚嘆し、尊敬さえしながらロレンス達は北へ向かう。
 果たして追手は来た。雇われたのがフーゴ傭兵団だと知り、ルワードは破顔し、ヒルデは安堵する。傭兵同士の絆の深さを考慮していない采配に、ヒルデは急進派にはまだまだ付け入る隙がある、と判断した。
 だが、甘かった。フーゴ傭兵団は金を積まれ、ミューリ傭兵団を裏切っていた。商人の作る世界が信頼も誇りも踏みにじる様を見せつけられて、ロレンスは絶望の中ホロの名を呼ぶ。禁書を持ち帰って合流していたホロは、本来の圧倒的な力を振るい、ミューリ傭兵団がスヴェルネルへ逃げ込む時間を作る。だが、スヴェルネルの参事会商人株筆頭議長ジャン・ミリケは協力を求めるヒルデに対し、色よい返事をしなかった。
 圧倒的に不利な状況の中、まだヒルデは諦めていなかった。派兵による出費を冷静に計算し、急進派の資金源は底をついていると確信していた。戦が長引けば、まだ交渉の余地はある筈。しかし、急進派の使者は資金は潤沢にある、と道に銀貨をばらまいてみせた。
 不正に得た資金でも、こんなにも大金を隠し持っていられたものか。ロレンスは急進派のやり方に違和感を抱く。大金で人を跪かせるような方法が情けなく、絶望に打ちひしがれながらも、ロレンスは急進派のからくりに気付く。…

 盛り上がりましたね~。
 いや、面白かったです、ヒルデかっこよくって(笑)。ロレンスの夢見る「商人の作った世界」、経済社会が理想郷だとは今の世の中では考えにくいんですが、当時の身分差だとか何だとか努力ではカバーしきれない所が多かった時代には、いい面しか見えなかったんでしょう。「商いの利益とは誰かを喜ばせて得るもの」ですものねぇ。
 結局ヨイツへ辿り着く前に、物語は終わってしまいましたね。番外編短編集がこの先出るみたいで、楽しみです。