読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

<勾玉>の世界 荻原規子読本 荻原規子著/徳間文庫編集部編 徳間書店 2010年

 荻原規子の児童書『勾玉シリーズ』を中心に、対談やエッセイ、書き下ろし小説が掲載されたファンブック。

 内容は、中沢新一さんとの対談、『これは王国のかぎ』『樹上のゆりかご』のベースになった短編三本、
 上橋菜穂子さんとの対談、『空色勾玉』が出版されるまでの当時の思い出を語ったエッセイ、
 『空色勾玉』本編では描かれなかった一場面 稚羽矢と狭也の戦に行く前のひと時を、侍女・奈津女とその夫柾の眼を通じて描いた番外編。

 『空色勾玉』が出版された当時の、宣伝文句だったか謳い文句だったかを今でも覚えていて。「日本発、ファンタジー」だったんですよね。今回、この本の中でもそのことは随分強調されていました。…そんなに日本神話を題材に取った作品ってそれまでなかったっけ?? いや、具体的に作品名とかは上げられないんですけど、これは戦後、戦前の価値観をタブーとしたことが大きいのかなぁ。神話自体は、イザナギイザナミにしても因幡の白兎にしても、一応語られて来てたけど。
 中沢さんとの対談にあった『ドラえもん』が欧米ではなかなか理解されない、ってのは『BSまんが夜話』でも以前言われてましたね。のび太が同じ失敗を繰り返す様を欧米人は受け入れられないそうで、でも「のび太アスペルガーかと思う」ってのは初めて聞いたなぁ。無人惑星探査船「はやぶさ」に対する思い入れを日本人独特のもの、と言ってましたが、でもアメリカでもそういう話があった気がするんですが。ボイジャーだったか、最後まで通信を担当していた女性の、「坊や、こっちを振り向いて」の言葉に最後の写真を送って来る、って言う。
 上橋さんとの対談であった「思想やイデオロギーを語るために、物語が奉仕してしまってはいけない」っていうのは、私も同感です。そういう話って、折角お話が面白くても人に勧めにくいんですよね~(苦笑;)。沢村凛さんの初期作品『リフレイン』や『ヤンのいた島』、有川浩さんの作品にも透けて見える時があるな~。
 でも酷いわ荻原さん、私『ファンタジーのDNA』で紹介されていたからアラン・ガーナー『ふくろう模様の皿』読んだのに、今さら「彼の本というのも私にはあまり面白くなかった」って言いだすなんて(苦笑;)。
 
 上田ひろみの番外編三作は、実はあまり読みたくなかったものだったり。私は荻原さんの作品では『白鳥異伝』が一番好きで、でも一番「よくできてるなぁ」と思ってるのは『これは王国のかぎ』で。だから、上田ひろみの物語はあの話で完結して欲しかったので、『樹上のゆりかご』も主人公をまた新たに作って欲しかったくらいなので。

 表紙のイラストは佐竹美保さん。上橋さんの挿画も担当されたことありますもんね。佐竹さんの、ちゃんと内容を把握しているイラストは好きなんですけど、でもね、佐竹さんの絵はバタ臭くて、こういう日本風な作品には合わないと思うんだけどな~。