読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

統ばる島 池上永一著 ポプラ社 2011年

 八重山諸島の離島群それぞれを舞台にした短編集。

 竹富(タキドゥン)島
 竹富島は祭の島。種子取祭(タニドゥル)にて、新しいツカサ小底晴美は、神から『元(ムトゥ)タラクジ』と『伏山敵討』を見たいとお告げを受けた。演者に選ばれたのは中学生の新垣優奈と真栄田航平、どちらもプロでさえ難しい演目で、優奈と航平は望みもしない特訓を受ける羽目に。本番までの一週間で、優奈は教師・入嵩西との禁断の恋の醜聞にまみれ、密かに優奈に恋していた航平は入嵩西への復讐を胸に誓い、共に役を物にする。

 波照間(パティローマ)島
 波照間島で、日菜乃はレンタサイクル屋を営むオジイを手伝っている。島の何もなさ加減が、自分に何もないことへの言い訳になって気が楽だとすっかり不幸に安住している日菜乃の前に、パイパティローマへ行ったことがあるというオバァが現れた。波のない夜、海へ出れば伝説の地パイパティローマに辿り着くと言うオバァの言葉に、日菜乃も船をこぎ出し、そして優しい人ばかりがいる島に打ち上げられた。

 小浜(クモー)島
 小浜島は、八重山諸島全ての島の特徴を備えながら小型化している島。30年前ここに嫁いできた仲程照子は、台所に祀っている火ヌ神の香炉が灰で溢れているのに気がついた。家族に何か異変が起こっているのではないか。照子は大舅の洗骨式を行うことを決意、親戚を始め島を出ている四人の子供も呼び寄せることにする。

 新城(パナリ)島
 新城島はその昔、ザン(ジュゴン)が獲れる島として、王府から特別な使命を課された島だった。その代わり、ザンが獲れなければ村は滅ぼされる。漁師のギールーは父親から手ほどきを受け、島民の期待を一身に背負ってザン漁に出る。だが、ギールーはザンの魔力に取り憑かれてしまった。美しい人魚を匿うギールーを、パナリの長の娘クナリは怪しむ。 

 西表(イリウムティ)島
 西表島に登山に来た学生・岩村伸也は大原港で、一人の男に声をかけられた。男は研究センターの技術者・古見と名乗り、この頃この島では遭難者が増えている、それは山の娘『メールビ』が復讐している所為だと言う。

 黒島(フスマ)
 黒島に小学校教師として鷹宮聖子が赴任して来た。鷹宮は十人の児童にエリート教育を施そうと熱意に燃えていたが、児童自身はどこ吹く風。図工の時間には全員でC60フラーレンを作り、古詩を唄いあげるさまに、鷹宮は息をのむ。だが他の教師たちはそれを異常なことと捕えていない。この島の子供たちには何があるのか。

 与那国(ドゥナン)島
 与那国島の久部良港は戦後、密貿易商で賑わった。その中心にいたのが東迎清子、台湾と日本とアメリカ海軍を繋いで巨万の富を築いた女傑である。今日も清子は孫娘にせがまれるまま、当時の思い出を語る。

 石垣(イシャナギゥ)島
 南風野佳菜子は群星御嶽のツカサに選ばれたが、生まれて一度も神秘体験をしたことがない。不安に思う佳菜子に、祖母はそれでいいと言う。今日も佳菜子は島のショッピングモールで、離島に送る物資を誂えている。…

 バックボーンがあるのは強いなぁ。池上さんは、沖縄を舞台にしてない作品も書いてるし勿論それも面白いんだけど、でもこういう作品になると格別。これは実話なんじゃなかろうか、と思ってしまうような雰囲気が立ち上って来る。現実とファンタジーが混在している感じ。
 1週間でプロにも難しい踊りを踊らなくてはならなくなった優奈が師匠に言い放つ「じゃあ、私も先生のようにうわべだけで踊ります」とか、思わず笑ってしまいました。こういうこと言っても嫌味にならない風土というか、それを許す風土がある気がするよな~(笑)。
 掃除が上手い仲程照子さんや、熱血教師の鷹宮先生、女傑でかっこいいとしか言いようがない東迎清子、みんな好感度高いのに、ギールーとか古見さんとか、男連中が情けないのは池上作品の特徴でしょうか。
 大長編よりこういう緩く繋がる短編集の方が、ペース配分考えて書いてらっしゃる気がするのはどうしてかしら(笑)。
 やっぱり沖縄は日本とは別の国だと思うなぁ。