読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

人間失格ではない太宰治 爆笑問題 太田光の11オシ 新潮社 2009年

誰もが太宰に見抜かれた気持になる。ずっと隠してきた恥ずかしい秘密が、どうしてバレたんだろう、と思う。だけど太宰治の本当の素晴らしさは、そこにはない。彼が偉大なのは、読者を幸せにし、明るくさせる見事な小説を書いたからだ。私はそんな11本の短編を選んだ。  
                                      爆笑問題 太田光(裏表紙の紹介文より)

 そうか、去年って太宰治生誕百周年だったのね~。何だか色々映画になってるなぁ、とは思ったのよ(←いや、気付けよ;)。
 森見登美彦さんにしろ“文学少女”シリーズにしろ、何だか太宰に縁づいたここ数年、一度しっかり読んでみたほうがいいのかな、と思っていたら目に留まった一冊です。爆笑問題太田光さんが選んだ太宰治の短編11篇を中心に編んだムック本。

 収録されているのは
  滝壺に落ちる学生を見て、大蛇に憧れた少女スワの話『魚服記』
  父親を亡くしたばかりの女生徒の一日を描いた『女生徒』
  一人の男が自分の主人を売るまでの葛藤『駆込み訴え』
  五人の兄弟姉妹がリレー形式ででラプンツェルと王子の物語を綴る『ろまん燈籠』
  私小説富嶽百景
  五人の兄弟姉妹が老博士のある日の散歩模様を連作で綴った『愛と美について』
  防空壕の中で父親幼い娘に語るお伽噺をアレンジした『御伽草紙』から
   人格者の隣のお爺さんが馬鹿を見る『瘤取り』
   竜宮城の価値観や玉手箱の意味を改めて描き直した『浦島さん』
   狸を中年男に、兎を16歳の処女に置き換えた『カチカチ山』
   無垢な雀と男の交流、誰よりもまともな感覚を持った妻『舌切雀』
 
 その他、各人が太宰に寄せたエッセイや、太宰治坂口安吾織田作之助の座談会、太宰治の遺書、坂口安吾の太宰への追悼文等。

 正直に言います。私は太宰とはあわないようです。…というか、私小説ってのがよくわからないんだな。エッセイとどう違うんだろう、とか思ってしまう。「私」小説ではなく、作り物の小説まで練り上げてくれた方が読み易い気がする。『御伽草紙』はちょっと面白いかも、とは思ったのですが、それでも登場人物みんな饒舌で、何か作家の主張が透けて見えるようで妙に鬱陶しい。
 私がこれまで読んだことがあった太宰作品は、新潮社の短編集『走れメロス』の一冊のみでした。強烈に印象に残っているのは『駈込み訴え』で、今回このムック本にも収録されていたのがちょっと嬉しかった。『駈込み訴え』は何と言っても最後の一文、まるで推理小説のようだとぞくぞくしたのを覚えています。これは面白いと思ったんですよ、一人芝居でやってもきっと面白い、でも女にはできないなぁ。
 …ああ、何だか文章が影響されてる気がするなぁ。気のせいだと思うけど。