読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ビブリア古書堂の事件手帖6~栞子さんと巡るさだめ~ 三上延著 メディアワークス文庫 2014年

 『ビブリア』シリーズ6冊目。
 ネタばれになってる気がします、すみません;

 かつて太宰治稀覯本『晩年』を、栞子から奪おうとした青年・田中敏雄が保釈された。彼は再び大輔たちの前に現れる、今度は依頼者として。
 彼の祖父は別の『晩年』初版本、しかも太宰直筆の珍しい書き込みがあるものを持っていた、それを探して欲しいと言う。栞子は田中敏雄がまた無茶な行動に出ないよう、警戒する意味も込めて古書探しに応じる。
 敏雄の祖父・嘉雄と懇意にしていた古書店・虚貝堂の二代目や嘉雄の友人・小谷、そこから行き着いた嘉雄の師に当たる人物・富沢博。富沢は人間不信に陥っていて、栞子たちには会いたがらない。娘の紀子曰く、47年前、稀覯本の盗難にあってからだと言う。盗まれたのは月曜荘版『駆け込み訴へ』限定版。厳重に施錠された書庫から誰がどうやって持ちだしたのかは結局分からないまま、ただそれを再び取り戻して富沢の元に返したのは栞子の祖父・聖司だと聞いて、栞子と大輔はその因縁に驚く。
 当時の様子を聞くため、紀子の友人で出入りもあった久我山鶴代の元へ。鶴代の父親・久我山尚大はやはり古書店を営んでおり、篠川聖司の師匠に当たる存在だった。事件については何も知らない、と屈託なく語る鶴代。だが栞子はその雑談から、『駆け込み訴へ』を盗んだ人物やその方法を見抜く。誰が陰で糸を引いていたかまで。栞子の話を聞いた富沢は、長年の疑問が解けた礼代わりのように、敏雄の探す『晩年』がどんなものなのかを二人に教えた。
 嘉雄が持っていた『晩年』は今どこにあるのか。栞子の蔵書の『晩年』を預かっていた大輔は、敏雄に強襲された。スタンガンで動けない大輔の前で、敏雄はどちらの『晩年』も手に入れる、とうそぶいてみせる。
 敏雄と大輔の祖父母、栞子の祖父まで関わっていた事件の真相は。…

 
 みんな、太宰好きだなぁ。私にはそんなに惹きがないんですけどね、そりゃ『駆け込み訴へ』は面白かったけど。
 『駆け込み訴へ』に関しては、私はミステリーみたいだ、と思って読んだ覚えがあります。このエピソードの数々、もしかしてこれはあの人物のことを語っているんだろうか、そしたらこの語り手は、と緊張感が高まった所での名乗り「私はイスカリオテのユダ」。…やっぱりそうか、凄えっ!ってな感じで。…でも後日読み返してみたら、結構最初の方から「あの人物」の名前が出てたりして、自分が不注意に読み飛ばしただけだったのね、とちょっとがっかりしたり。勝手なもんです(苦笑;)。
 面白かったです。第二章『駆け込み訴へ』の密室からの盗難方法とか、物凄く納得しました。しかし、そんな古い本、よく破ったりせず盗めたよなぁ。
 田中敏雄と大輔の因縁かと思われたのに、栞子さんや智恵子さんの出生まで巻き込んできました。そりゃその人、栞子さんが気に入らなかった訳だよなぁ。瓜二つな訳だし。
 栞子さんのお父さんはどこまで知っていたのか、お祖父さんは全て承知していたんでしょうか。
 ラストに明かされるとある人物の望みは、一巻目に出てきた復刻版では駄目なのかしら、と身も蓋もないことをちらっと思ってしまいました。読まれるための本なのに、読んでしまうと価値がなくなる、ってのも何だか本末転倒な話だよなぁ。
 次かその次でシリーズは終わるそうです。楽しみなような、残念なような。