読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

オー!ファーザー 伊坂幸太郎著 新潮社 2010年

 四人の父親を持つ高校生が巻き込まれたエピソード。
 ネタばれになってるかな、すみません;

 由紀夫には四人の父親がいる。一人の母親とみんな一緒に住んでいる。由紀夫が産まれた頃、母親は四股を掛けていたらしい。
 彼女にとって大事な夫たちは、由紀夫にはなかなか面倒な父親だ。ギャンブル好きの鷹、天然の女たらしの葵、中学校の教諭をしている肉体派の勲、大学に勤める思慮深くて真面目な悟。
 鷹と一緒に行ったドッグレースで、由紀夫はとある男が鞄を盗まれる現場を見てしまう。思わず犯人を追いかける途中、由紀夫は中学の時の同級生・鱒二に会う。鱒二は牛蒡のような男たちの万引き現場を注意して以来、牛蒡男たちにからまれ、つけ狙われていた。鱒二の逃亡に巻き込まれ、犯人の追跡は当然中断の憂き目に。
 話を聞いた葵は、鞄を盗まれた男の気を惹いていた女に心当たりがあると言う。後日、彼女が死体で発見された。車の中で、男と練炭心中していたのだとか。
 鱒二は牛蒡男から逃れるため、一度だけ運び屋をやると約束し、しかしすっぽかし、裏の世界ではとにかく有名な富田林に不興を買う。切羽詰まった鱒二を救うため、四人の父親はとんでもないでまかせを約束する。
 色々ちょっかいを掛けてくるクラスメイトの多恵子、多恵子に振られたバスケ部の先輩、引き籠って学校へ来ない野球部の小宮山、一千万かけた素人参加のクイズ番組、小さい頃見たTVドラマ、白熱する知事選。全てが繋がり、収束に向かう。…

 伊坂さんの作品は読み始め、何だか時間を取られるなぁ; 後半はスピードアップするんだけど。
 ええとですね、多恵子ちゃんと鱒二がどうも好きになれなくてですね。何だこの身勝手に傍迷惑な女は、この無責任男は何なんだよ、って感じで(苦笑;)。鱒二に関しては最後まで印象変わりませんでしたね、結局周り中に助けられて、自分は何の尻拭いもしてないじゃん、とか思ってしまった。
 とは言え、この話は伊坂さんならではですね~。後々、似たような設定の映画や何かに思い当って、とかあとがきで書いてらっしゃいましたが、この妙にドライな肌触りのいい感じは伊坂さんの個性ですよね。みんなで由紀夫の歓心を買おうと張りあって、でも協力体制は惜しまない。小洒落た会話、名台詞も目白押し。細かいエピソードやはてなの説明が全部ついていくのはやっぱり快感です。
 何でも、伊坂さんの第一期最後の作品なんだそうで。こういう乾いた明るい話から、ちょっとやりきれないような話に移って行くのかな、宮部さんが社会派な題材を扱うようになったように。時々は初心に戻って、得意な分野だけの話も、書いて貰ってもいいんですけど。