読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

首折り男のための協奏曲 伊坂幸太郎著 新潮社 2014年

 連作短編集、かな。
 ネタばれになってる気がします、すみません;

首折り男の周辺
 巷で「首折り男」が話題になっている。何人もの人間が首を捻られて殺されている、しかも刺殺された死体でさえ首の骨が折られていたのだとか。目撃者の証言を聞いて若林夫妻は、アパートの隣の住人が藩ではないのか、と疑いを持つ。
 隣の住人・小笠原は人の良すぎる性格が災いして借金に追われる毎日。ある日街中で「大藪」に間違えられ、とある交渉の場に引きずり出される。
 中学生の中島翔は、ちょっとした言葉の行き違いから、学校で虐められるようになった。金銭を脅し取られる寸前、中島は大藪という男と出会う。大藪は、その場に立ち会ってやる、と言う。

濡れ衣の話
 丸岡直樹は偶然、三年前に自分の息子を車で轢き殺した女に出会った。そのあまりにも罪の意識のない様子に、丸岡は思わず女を刺し殺してしまう。それを見咎めた男に、全てを告白する丸岡。数日前した、近所の小学生との約束事まで。

僕の舟
 若林夫妻の妻・絵美には、大切な思い出の人がいる。子供の頃遊園地で迷子になった時に出会った男の子、勤め出してすぐ銀座で出会った、埋蔵金を捜しているという医学生
 寝たきりの夫の看病をしながら、絵美は探偵の黒澤に、その医学生の行方を捜してくれるよう依頼する。

人間らしく
 義弟の浮気の現場を抑えて欲しい、と依頼された黒澤。調査対象が浮気相手と旅行に行った温泉地に、天候不順により黒澤も足止めを食らい、知り合いの作家の家で宿を借りることに。そこで延々と語られるクワガタの飼育、それに学習塾で理不尽な虐めにあう中学三年生の少年が重なる。

月曜日から逃げろ
 テレビのプロデューサーを名乗る男に、犯行現場の映像を撮られてしまった黒澤。視聴率のために何かと評判の悪いその男に、弱みを握られた黒澤の取った行動は。

相談役の話
 大して親しくもないのに、作家の自分と会いたい、と言って来た大学時代の同級生。父親の会社に就職した男は、山家清兵衛という男について聞きたいと言う。伊達正宗の息子・秀宗に相談役として就けられた彼は、結局秀宗に殺され、以降清兵衛の呪いと噂される凶事が続いたのだとか。同級生は、自分の境遇に似ている、と言い出す。

合コンの話
 銀座で男三人、女三人で開かれた合コン。幹事がいきなりドタキャンしたため、その場で初めて会った男が一人交じることになった。挙動不審その男に、丁度その頃、近くで殺人事件が起きたことも相まって、残り5人の頭にあらぬ妄想が膨らむ。…

 
 あとがきに曰く、元々は全く別の短編だったのに、一つの話にまとまってしまったのだそうで。
 出だし、いきなりはじまる小笠原の理不尽な境遇に、何だか憂鬱な気分になりながら読み始めました。で、続いて中学生の虐めの記述だもんなぁ。でも伊坂さんだから、決して後味の悪いものにはなるまい、と信じて読みましたよ(苦笑;)。
 一つ一つのお話はなるほど、と面白く読みました。どの話のオチにもおお、と思ったし。でも全体を通じて見ると、何だかちょっと物足りないような。本当に知りたいのはここじゃないんだけど、というエピソードばかりがある気がして。いや、本当、一話一話は面白かったんですけどね。で、結局大藪さんは、どうしてあんなことになったのやら。単純に返り討ちにあった、と考えていいのかなぁ。
 首折り男の話、というより黒澤さんの話だったかもしれませんね。
 それにしても伊坂さん、この頃浮気する男の話が多い気がするんですが、気の所為かしら。