読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

光待つ場所へ 辻村深月著 講談社 2010年

 短編三本収録。

 しあわせのこみち
 T大の一般教養科目『造形表現』で、清水あやめは田辺颯也の映像作品に打ちのめされる。何でも他人より上手く、そつなくこなして誉められることしかなかったあやめが、初めて敗北感を感じた。「本物」である彼もあやめを意識していたと知って、あやめは動揺する。あやめが去年落ちた夏季絵画コンクールに奨励賞を獲っていた彼。技術に任せて自分をさらけ出すことができないあやめに、田辺のアドバイスは深く響き、あやめは冬季コンクールへの出展作を描き直す決意をする。

     持てる者同士の会話。…う~ん、何だかちょっと痛いと言うか恥ずかしいと言うか、
     いたたまれない箇所もあったんですが;;


 チハラトーコの物語
 「私」千原冬子は息をするように嘘を吐く。それで誰を傷つけたこともない。小さい頃からステージママに連れられて、モデルやテレビドラマの端役のような、ちょっとした芸能活動をしてきた。芸能界を夢見るクラスメイトに、失望させないような罪のない嘘を吐いていた。両親が離婚してほとんど芸能活動をしなくなって、それでも周囲に嘘を振り撒いていた。中学校の司書の教師・重森は、そんな私を「サービス精神が過剰なだけ」「千原は愛の人だよ」と言う。
 成長して芸能事務所に所属して、コスプレモデルを細々と、それでもプライドを持って続ける私に、映画のオーディションの話が来た。脚本は赤羽環、新進気鋭の日本で最も多忙な脚本家。彼女と私には因縁があった。… 

     『スロウハイツ』で悪役だった彼女に救いを与える一篇。
     …とは言え私、肝心の「彼女」の名前覚えてなくて、「多分あの子なんだろうな」って
     思ってるだけなんですけど。
     ゲリラ撮影会をやる磯山ミオを庇う場面の嘘はかっこよかったですね。
     これぞ冬子のプライド!って感じで。


 樹氷の街
 合唱コンクールの自由曲が漸く決まった。『樹氷の街』と言う曲の伴奏を、倉田梢はなかなか弾きこなせない。わざとらしいアピールにも嫌気がさして、指揮の天木は松永郁也に自由曲の伴奏と、倉田への課題曲の伴奏練習を見てくれるよう頼む。…


 さて。私は懐かしくも読んだのですが。
 この本だけを読んだ人は楽しめたのかな、と言うのは相変わらず思ってしまいました。あやめの鷹野へのこだわりとか、冬子と環のいざこざとかこの作品だけでは分からなかったでしょうし、「何だこの思わせぶりな書き方は」って人によってはむっとするんではないかしらん。
 初心者にも優しい作品であってくれ、と願ってやみません。