読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

グ、ア、ム 本谷有希子著 新潮社 2008年

 ネタばれと言うか、あらすじほとんど書いてます、すみません;

 長女は北陸から東京の大学へ進学して、キャバクラ一歩手前のジャズバーでバイトをし、卒業後は就職できずにアナウンサースクールへ通学、そこで知り合った男と同棲して、今は大型スパ施設で垢擦りマッサージスタッフとしてバイトしている。
 いつまでもふらふらしている長女を見て、四つ下の次女は堅実に育った。高校時代もバイトに励んで貯蓄に勤しみ、卒業後さっさと大阪の信用金庫に就職を決めた。えせ関西弁を喋る同郷の男に転がりこまれながらも、故郷の両親に仕送りをするしっかりさは相変わらず。
 そんな娘たちと母親が、グアム旅行に行くことになった。スポンサーは父親、でも次女は自分の分は自分で出すと言う。勿論長女にはそんな金銭的余裕はない。
 観光プランにも水を差す、文句も我がままも遠慮なく言いまくる。長女の態度に次女は腹が立ちっぱなし、抜いた親知らず痕の痛みが治まらないこともあって口喧嘩が途切れることはない。その間に立って母親はおろおろ、その上折角グアムに着いたのに天気は季節外れの大雨、大風。間はとにかく悪い。
 これではさすがに、と休戦を申し入れる次女。「母親のために」という言葉に長女はやはりかちんと来て大喧嘩して、でもそれを受け入れる。急に仲良くなった二人の態度は、嬉しいけど何だか気味悪い、とこっそり母親は戸惑ったり。
 それでも最終日、漸く青空が顔をのぞかせた。…

 …なんだこれ、ちょー面白ぇ。
 と慣れないいまどき風に呟いてみる(苦笑)。
 あ~、分かるわぁ、この姉妹喧嘩っぷり。始めはぎこちなく「よ」だの「ほ」だの挨拶しちゃうんだよね、でも時間が経って来ると遠慮がなくなってくるんだよね。家族ならでは、「気ィ使えよ」って思うし思ったら言っちゃうし、友人同士では決してならない険悪な雰囲気にまでなるんだよねぇ。私には兄しかいないんですが、もし母と兄と三人で旅行する、ってことになったら絶対兄の我がままっぷりにも、それを受け入れる母親にもは腹が立って空気悪くなると思うもの。これが母親と二人だけの旅とかだったらそうはならないんだけど(笑)。
 黒ウサギとか時計のトリックとか、細かい小道具が効いてるのも面白かったです。次女について、「堅実」と言いながらワンシーズンしか着られない服買ったり、煙にしかならない煙草吸ったりするかなぁとはちょっと思いましたけど。…その辺のいい加減さもありかなぁ。
 でもあれ、目が覚めたら次女絶対怒るよなぁ。これだから責任感のない人は、って。後始末と言うか手続き大変だと思うもの。