読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

SOSの猿 伊坂幸太郎著 中央公論社 2009年

 ネタばれになってるかな、すみません;

 「私」遠藤二郎は家電量販店の店員で、副業でエクソシストをやっている。幼馴染の辺見のお姉さんに、彼女の息子・眞人がひきこもっているので相談に乗って欲しい、と言われた。半年ほど前まではコンビニへ行くくらいはしていたのに、今は全く部屋から出ないのだとか。気が進まないながらも何回か通ううち、眞人は自分を、孫悟空の身外身の術に乗っ取られた者だと言い始める。孫行者の力を分け与えられた自分には、未来を見通す力があるのだとか。
 五十嵐真は「因果関係を突き止める」仕事をしている。今回、証券会社が誤発注して、二十分間で三百億円を失った原因を調べることになった。入力ミスをしたのは田中徹、以前にも段ボール箱を百箱も発注した前科を持つ粗忽者ではあるのだが、その日は特に眠気に襲われていたのだとか。社宅として借り上げられているマンションの隣室が、前の晩うるさかったらしい。五十嵐はその家族を訪ねることにする。
 頻繁に見える幻想は孫行者の姿を取って自分達に話しかける。虐待を受けているらしい小学生、首輪をつけて散歩させられていた主婦、飛び出して来た男を轢いてしまった女、その男が働いていたのは眞人がよく通っていたコンビニだったと言う事実。
 「暴力は善なのか悪なのか」眞人は繰り返し問う。眞人が語る半年後の未来は、遠藤二郎を動かす。…

 ふう、面白かった。
 代わる代わる語られる二つの話、どこで繋がるのかと思ったらこんな形でしたか。
 いざ半年後になったらどこまでが現実でどこまでが「お話」なのかちょっと混乱しましたが(と言うか作者もきっとそれ狙ってるよね?)、それもくらくら楽しめました。
 伊坂作品恒例、何気ない伏線は今回は段ボールくらいだったかな~。「ああ、成程!」とすっきりしました。…でも無駄だったんですけどね(笑)。この誤発注は現実だったのね。
 二郎さんのお母さんの開き直りっぷりは気持ちよかったです。どうせ図太くなるなら、こんな風にならなくちゃね(笑)。伊坂さんの作品で後味よかったの久しぶりかも。
 大きくなった方の孫悟空の身外身はどうなったのかな。本文ではとうとう触れられませんでしたね。
 他作品とのリンクは、今回私は気が付きませんでした。あったんでしょうか、前読んだ分の細かい所忘れてるからな~。