読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

もいちどあなたにあいたいな 新井素子著 新潮社 2010年

 新井素子作、ホラーと言うかSFと言うか…。
 ネタばれになってるかも、すみません;

 やまとばちゃんが真帆を亡くした。
 やまとばちゃんは和叔母ちゃんの略。澪湖にとって、母親よりも懐いていた叔母ちゃん。
 結婚後なかなか子宝に恵まれず、体外受精までして、それでも授からなくて、とうとう諦めた後にひょっこり、漸くできた娘・真帆ちゃんを、やまとばちゃんは喪ってしまった。
 やまとばちゃんを心配した澪湖は、やまとばちゃんに貼り付いて様子を窺う。そして気付いてしまう。
 このやまとばちゃんは、やまとばちゃんじゃない…。
 背中の水着の跡、何気ない仕草、言葉使い、嗜好の変化。他の人は気付かなくても、澪湖には判る。やまとばちゃんはやまとばちゃんなんだけど、でも澪湖にとってのやまとばちゃんじゃない。
 やまとばちゃんは過去、数々の不幸に見舞われていて、そのたびに立ち直ってきた「強い女」だった。ピアニストを目指していたのに中指を骨折し、高校受験を水疱瘡でふいにし、恋人を通り魔に殺された。でも涙を見せることなく乗り越える。そして今回も。
 もしかして今までの強さも関係していることなのか。一体彼女は誰なのか。…

 新井素子さんとか北村薫さんの作品は、読み始めてすぐ「ああ、そうだった、こう言う文章書く人だった」と思います。何しろ独特ですよね。慣れるのにちょっとかかるんですよ。そして必ず影響される(笑)。
 新井さんのは懇切丁寧、もういいから話薦めてよまわりくどいんだよ、って位詳しく説明してくれる文章。特に今回、澪湖が結構パニックになり易い性格で、話が脱線する脱線する(笑)。こんな子身近にいたらいらいらするかもな~(苦笑;)。
 作中にジャック・フィニィ作『失われた町』の名前が出て来ます。オマージュ作品でもあるんだろうなぁ、読んどいた方がいいのかなぁ。翻訳ものはちょっと苦手なんですけどね、こんなにも他の作家に影響を与えてると言うことは面白いんでしょうね。でもこの作品のやまとばちゃんの秘密は、ちょっと違うようですが。…これは孤独だなぁ。淋しくて哀しい。しかも誰も理解できない。
 今回妙にフェミニズムも入った作品でしたね。嫁姑問題、嫁舅関係に嫁小姑問題まで。母親と娘の関係も描かれていて、そういえば新井さん、母娘関係があまり上手くいってない作品いくつか書いてますよね。
 表紙の絵が早川司寿乃さんでした。私にとっては梨木さんの本でよく見かける方なのですが、この人の繊細な絵、好きだな~。