読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ホテルジューシー 坂木司著 角川書店 2007年

 『シンデレラ・ティース』姉妹編。
 ある女子大生の、沖縄のホテルでのひと夏のアルバイトを描いた短編集。

 ホテルジューシー
 大家族の長女・柿生浩美は世話焼きで段取り魔の大学生。長い夏休み、石垣島のホテルでバイトする筈だったのに、オーナーからの依頼で那覇の安ホテルが仕事先になってしまった。
 前任者は引き継ぎが終わるとすぐ辞めてしまったし、オーナー代理・安城幸二は夜だけまともな不眠症患者。掃除係のクメばぁとセンばぁは勝手にお客の荷物に触るような神経で、調理担当の比嘉さんは自分ちのおかずまで作ってしまう。自分の価値観からするととても許されることではなく、浩美は何だかいらいらしっぱなし。
 ある日、長逗留のおじいさん・山本さんが血を吐いて倒れた。若い頃は旅から旅で子供も死なせてしまった、と嘆いていたのに、ちゃんと息子さんは生きている様子。騙した、許せないと怒る浩美をオーナー代理が宥める。

 越境者
 ギャルがやってきた。ユリとアヤと名乗る二人はこちらの迷惑顧みず、折角の親切もまるでスルー。夜更かしして朝寝して、性質の悪い観光客に引っかかって…と見ている浩美がやきもきする行為を繰り返す。放っておけと言うオーナー代理は、その理由にどうやら思い当っているらしい。
 
 等価交換
 アンティークを取り扱う業者だと言う田中さん。連泊の予約だったが途中で切り上げ、その後ホテルの周りを外国人メインの不審人物が何人もうろうろしている。詐欺行為を働いていたのか、ホテルの信用問題にも関わる事態にうろたえる浩美。その怒りも後悔もひっくるめて、オーナー代理は浩美をハンビーナイトマーケットに誘う。

 嵐の中の旅人たち
 台風の中、宿泊客は三人。いつになくしっかりしているオーナー代理指導の下、一人の客はどうやら困ったちゃんな感じで、旅の経験を張りあい、旅先ならではの冒険を求め、失敗談をブログにアップしているとか。嵐の中、昨日友達になった地元の人と遺跡を訪ねると出て行ったが、帰って来た客にオーナー代理は「自分が付き添ってもいい」と不可解な事を申し出る。

 トモダチ・プライス
 町でお弁当を売っていた若い女性・ヤスエさんは観光客崩れの屋台商売人。人はいいのだが考えが甘く、借金まで作ってしまったらしい。夜の仕事にまで手を染めかけるヤスエを、浩美は放っておけない。それは同情なのか自己満足なのか。

 ≠(同じじゃない)
 仲睦まじい年配の夫婦。常連客らしい二人はのんびり観光を楽しんでいたかと思いきや、三日目から別行動を取り始めた。一日中ぼーっとしている旦那に対し、市場でアルバイトをしている奥さん。浩美は思わず旦那を怒鳴りつけてしまう。

 微風
 夏休みが終わって、大学へ。浩美も咲子も、どうやら少し成長したらしい。…

 頭の固い、真面目で保守的な女の子が、少し世界を広げる話。
 ちょっと強引かな、と思う話もありましたが面白かったです。
 物事を片面からではなく、色々な方面から見る、と言うのは楽しいですよね。目から鱗が落ちる瞬間、と言うのは一種の感動、わくわくしてしまう。だからかなぁ、私は何となく人の言い訳みたいなもの聞きたいんですよね、何故そうなったのか、そう思ったのか、納得できると嬉しいので。…でも自分が言うのは、よほど親しい人相手じゃないと、何となく嫌だし面倒臭いんだけど(苦笑;)。
 できれば意見の違いなんかを許容できる人でありたいなぁと思いつつ、でも頑なさと言うのも若さゆえの特権だよなぁ。
 何となく、この間の某スノボー選手の着こなし問題を思い出しました。若い人の方が、あの着崩し方を許せない人が多かった、と言うのをどこかで聞いたので。