読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

三匹のおっさん 有川浩著 文藝春秋 2009年

 連作短編集。

 第一話
 清田清一。60歳で定年退職、近所のアミューズメントパークの経理に嘱託として再就職。自宅の道場で剣道も教えていたが、生徒が今年の春でいなくなって教室は自然消滅。自分ではまだまだ若いつもりなのに、二世帯同居の嫁には赤いちゃんちゃんこを着せられ、息子には道場を潰せと言われ、孫息子の祐希には可愛げのない態度を取られ、まるで面白くない。愚痴を言いに近所の居酒屋『酔いどれ鯨』へ行くと、幼馴染で元店主の立花重雄から、私設自警団を組織しないかと打診された。もう一人の幼馴染、工場経営者の有村則夫も巻き込むと言う。
 再就職先のアミューズメントパークの経理は無茶苦茶、しかもしょっちゅう売上金を強盗されていると言う。偶然客がカツアゲされているのを見かけ、チンピラを一喝する清一。チンピラは逆恨みし、アミューズメントパークでバイトする祐希をターゲットに狙う。

 第二話
 近所に悪質な痴漢が出没している。夜8時から10時と言う早い時間帯で、強姦未遂に遭っている女性も出ているとか。三匹が夜回りを強化する中、則夫の娘・早苗が襲われる現場に出くわす。
 
 第三話
 重雄の妻・登美子に声をかけて来たロマンスグレーは、登美子の昔のクラスメイトらしい。家庭に恵まれない、と嘆く男に惹かれて行く登美子。こっそりデートする様子を見かけて祐希と早苗は動揺、清一に相談する。その頃登美子は男に駆け落ちを迫られていた。

 第四話
 この春まで剣道を教わっていた工藤昴が、清一に相談を持ちかけて来た。学年をあげて飼育しているマガモの雛が、虐待を受けているとのこと。学校側はマガモそのものを動物園に寄付して問題をなかったことにしたい様子、昴はそれに反発している。怪しいのは冷たい態度を取る理科教師か、ケージに入っているのを見かけた用務員か。三匹が見回りに乗り出す。

 第五話
 早苗のクラスメイト・富永潤子が、祐希を紹介してくれと言って来た。早苗にはそれを断ることができず、祐希もそれで傷ついている。落ち込む早苗を心配する則夫、潤子にまとわりつかれて不機嫌な祐希。そのうち、潤子が巻き込まれた自業自得とも言える事態が判明、解決に三匹が乗り出す。

 第六話
 清一の妻・芳江の友人・靖代が悪徳業者に引っかかっている。次々と高額商品を買い込む姿に子供達は心配するが、靖代は聞き入れない。相談を受けて三匹は客を装い、催眠商法業者に潜入調査する。…

 粗筋書いてて気が付きました。結構「偶然見かける」ことの多い作品だったんだなぁ。
 有川さんの作品らしく、痛快な短編集。こんなに上手く行かないと思うんだけどな、みたいなご都合主義な所も目立つんですが、有川さんの作品にこれを言っちゃ野暮なんでしょうね。
 登場人物皆さん饒舌で、説明全部してくれます。分かり易い話は好きなんですが(←志の低さが出てるよなぁ・笑)、ここまでとんとん拍子に進むと素直に読めなくなってくるのは、私がひねくれてるからなんだろうなぁ(苦笑;)。ちらっと出てくるいじめの問題とか、された方は覚えてるけどした方は無自覚なことが多いんじゃないかな。気が付いてる子の方が罪が重い、ってのは『十二国記』の最初の話のテーマの一つでしたよね。
 いや、ごちゃごちゃ考えず、素直に楽しむのが一番でしょう。
 表紙を含め、イラストがとにかく可愛い一冊でした。