読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

鷺と雪 北村薫著 文藝春秋 2009年

 昭和初期、令嬢・花村英子と女性運転手・別宮みつ子(ベッキーさん)の周りに起きる謎を描いた短編集の三冊目。
 第141回直木賞受賞作、ネタばれになってるかもしれません、すみません;

 『不在の父』
 浅草の暗黒街を歩いているルンペンの中に、名門の子爵様がいるらしい。その人は奥さんもまだ小さな子供もいる大学教授だったのに、ある日玄関口から忽然と消えてしまったのだとか。子爵家の人々にこの噂を聞かせていいものか、興味が先に立っていた英子はベッキーさんにたしなめられる。ベッキーさんの手引きでそのルンペンに実際に会って、理由と真相を知る英子。後日、そのルンペンの死亡記事が新聞に載る。

 『獅子と地下鉄』
 三越本店のある辺り、和菓子の老舗「鶴の丸」の男の子が来年中学受験する。とてもいい子だった筈なのに、夜9時過ぎに家を抜けだし、上野近辺をうろついていて保護されたのだとか。本人はそんな所にいた訳を話さず、日記帳には「ライオン」の文字。心配する両親から話を聞いて、ベッキーさんに導かれるまま、英子は答えに辿り着く。

 『鷺と雪』
 同級生の小松千枝子さんと、銀座の能面展でばったり出会った。千枝子さんは能面の一つを見て気を失う。後日話を聞いてみると、その面が台湾にいる婚約者にそっくりで驚いたとか。しかもその婚約者は、銀座で撮った写真に写り込んでいたらしい。不吉だと怯える彼女に、ベッキーさんと英子が真相を探り、話をする。…

 …これでシリーズ終わっちゃうんですか!? まだまだ続き、ありそうなんですけど。
 三越のライオンのジンクスは、関西在住の私でも聞いたことありました。お兄さんの叶わぬ恋はどんなものだったんでしょう。ベッキーさんの生い立ちも、一応前作で明らかにはなりましたがまだまだ喰い足りません。
 ほのかに心惹かれていた軍人さん、先行き怪しそうな雰囲気でしたが、やはりこの事件に絡めましたか。宮部みゆきさんと言い、恩田陸さんと言い、皆さん一度は題材にするんですね。それだけの事件ではあるんですけど。
 とはいえ、この間違い電話のエピソードは凄い。よく絡めたなぁ。首相官邸と時計屋さんの番号が似てた、ってのは史実なんでしょうね。
 面白いのは十分面白かったのですが、こんなシリーズ最後の作品が直木賞…? きっとこの作品だけ読む人も出ると思うんですが、これだけでも楽しめるかなぁ?? やはり選考基準がよくわかりません。