読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

噛みあわない会話と、ある過去について 辻村深月著 講談社 2018年

 短編集。2018年本屋大賞受賞後第一作。

 ナベちゃんのヨメ
大学時代、コーラス部でよく女子とつるんでいた“男を感じさせない男友達”ナベちゃん。卒業して七年、彼が結婚するという。部活仲間が集まった席で紹介されたナベちゃんの婚約者は、ふるまいも発言もどこかズレていた。戸惑う私たちに追い打ちをかけたのは、ナベちゃんと婚約者の頼み事。結婚式の余興で、彼女は私たちに、自分の友達としてふるまい、エピソードを組み込んだ替え歌を歌って欲しいと言い出した。

 パッとしない子
美術教師の美穂には、有名人になった教え子がいる。彼の名は高輪佑。国民的アイドルグループの一員だ。しかし、美穂が覚えている小学校時代の彼は、おとなしくて地味な生徒だった――体育祭の設営にまつわる、ある特別な思い出を除いて。今日、TV番組の収録で佑が美穂の働く小学校を訪れる。久しぶりの再会が彼女にもたらすものとは。

 ママ・はは
同僚の小学校教師の引っ越しを手伝っているうち、話題は今担任しているクラスのことから、自分の母親との関係のことに。彼女――スミちゃんの母親は「真面目教」の信者で、その一貫しない行動・言動に振り回されて来たとのこと。その怒りがピークに達したのは成人式の振り袖でのエピソード、しかし今ある写真には、スミちゃんとお母さんは仲睦まじい様子で映っている。

 早穂とゆかり
日比野ゆかりは個人塾の経営者。その教育方針が今、マスコミで話題になっている。湯本早穂はゆかりと小学校の同級生だった。小学校の頃のゆかりは、クラス上位にいた早穂から見て、霊感を主張するようなかなり「イタイ」子だったのに。県内情報誌の記者として、早穂はゆかりにインタビューを申し込む。…


 う~ん、後味悪い(苦笑;)。辻村さん、直木賞とって、嫌な目にあったのかな。
 『ママ・はは』はアンソロジー集で読んだことがありましたがそれ以外は未読でした。
 『パッとしない子』と『早穂とゆかり』は同一テーマ、みたいな感じかな。普通は主人公というか語り手に肩入れして読むものなんでしょうが、どちらも前段階から危うさが見え隠れする。有名人になった知り合いの昔話をしてる、って段階で「何か品がないなぁ…」と眉を潜めてしまいました。私自身、そういう噂話が好きではないので。で、私は、先生から贔屓にされることもなく、やっぱり祖母お手製のブラウスを「パジャマ着てるのかと思った」と言われてしまうような子供だったので。
 これは本人の態度もあるんだよな、何言われても「それがどうした?」と誇らし気に構えていればよかったのに、可愛らしい流行りの服にもどうしても未練があって、その卑屈さ、自信のなさが相手を助長させたんだろうな、とか今になってみれば分かるんですけどね。
 『パッとしない子』の語り手にしても、教師やってたら言って大丈夫な事とそうでないことの区別くらいつかなきゃ駄目だろう、とは思いました。ただ多分に彼女に同情したのは、教師も人間だもの、性格が合う合わないは絶対あるだろうということ(それをネタにしちゃいけないけど)。記憶の齟齬、というのもあるから、体育祭のエピソードについてはどちらが正しいかは最終的に曖昧だなぁ、とも思ったし。本人に届くほど言い廻ってたら、途中で誰かが「それ、年代違いますよ」って言って来そうな気もするし。
 TVで昔の同級生がどうなってるか調べる番組がありますが、あれって幸せな学生生活が送れてた人しかできないよなぁ、とふと思ったことを思い出しました。いや私、繋がりたい人とは年賀状のやり取りくらいはしてるもの。
 自分の黒歴史まで掘り起こされた短編集でした(苦笑;)。