読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

動物園の鳥 坂木司著 創元クライムノベル 2004年

 ひきこもり探偵・鳥井真一シリーズ最終作。…なのかな。

 木村栄三郎から鳥井真一に謎解きの依頼が来た。定年退職後、動物園でボランティアをしている友人・高田安次朗の所で、猫が苛められる事件が頻発しているらしい。同じボランティア仲間の松谷明子にも話を聞いてみたが、真一は明子が気に入らない様子。真一を動物園に引っ張り出して来た司は、そこでかつてのクラスメイト谷越に会う。谷越は中学時代、真一を苛めていた張本人。なのに何の屈託もなく懐かしげに司に声をかけてくる。谷越の心理が理解できない司は、やはり元同級生で警官の滝本に相談する。
 近くの公園にたむろする心優しいホームレスの存在、負傷した猫が見つかる時間。証言を繋ぎ合せて一つの答えを得たかに見えたが、真一は別の答えに行きつく。滝本の年の離れた妹・美月も加わって、真一は現在の謎と、過去の傷とも向き合う。司もまた、一つの決断をする。…

 シークレットトラックもついた最終巻。
 聡明な美月ちゃん、真一とお似合いじゃないのかな。それとも司との方が気が合うだろうか。
 今回、謎解き自体は大したことはありませんでしたね、いかにも悪役な人が犯人で。登場人物の成長がメイン。司は真一にすがっている自分を、滝本を通じて真一の言葉で指摘されます。誰も他人のことはよく見えるんだよね~。司は真一を突き放すことで自分自身も一人立ちし、真一も必死の覚悟で司の部屋を訪れます。臆病に不器用に、でもおずおずと成長して行く。
 …面白い事は面白かったんですが、何だろう、同じようなテーマの他の人の作品で、もっと胸に迫った小説があった気がする。この作品は私には、妙に出来すぎな気がして乗り切れませんでした、すみません;
 相変わらず美味しそうなものてんこもり。結局司はまた真一の部屋へ行ってご飯食べてるし(笑)。でも真一の部屋を訪れる人は増えて行ってる訳で、これはこれでいいんじゃないかな。特に急がなくても、無理に荒療治しなくても、ゆっくりのんびり構えて行こうよ。周囲はそれを許してるんだから。