読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

けさくしゃ 畠中恵著 新潮社 2012年

 戯作者・柳亭種彦こと高屋彦四郎知久を主人公にした連作短編集。
 ネタばれあります、すみません;

 戯作の序 これより、始まり、始まり、となりまする
戯作者、版元等の簡単な説明の後

 戯作の一 運命の者、歩いて玄関よりいたる
貸本屋の山青堂は種彦に、戯作を書いてみないかとしきりに勧めて来るが、種彦は武士が戯作を書くわずらわしさになかなか首を縦に振らない。そんな中、山青堂の手代・長介が、店を辞めて惚れた女・お仙と団子屋を開くと言いだした。話を聞いて種彦は、長介が思い描くシナリオとは別の話を語って見せる。

 戯作の二 世の中、義理と付き合いが、山とありまして
戯作を作るように真相を解く種彦のやり方が話題になり、小普請組支配の酒井から謎解きの依頼が来た。連歌の師匠の娘が産んだ子供の父親が知りたいと言う。候補は三人、手がかりは娘が残した歌。娘が死んだ今になって、父親を特定したいと言って来た経緯に眉をひそめつつ、種彦はある結論に行きつく。

 戯作の三 羨ましきは、売れっ子という名
江戸で評判の一冊、『御江戸出世物語』。覆面作者の正体を知りたいと、山青堂も興味津津。そんな中、一つの噂が巷に流れる。曰く、作者は実は種彦の嫁・勝子だとか。人気作家と思われた勝子の元に、無遠慮なファンは来るわ金の無心に来る輩は来るわ、種彦たちは大迷惑。こうなったら自分で見当をつけるしかない、と種彦は戯作を描きだす。

 戯作の四 難儀と困りごとと馬鹿騒ぎ
種彦が出した本『恋不思議江戸紫』に、盗作だといちゃもんをつける輩が出てきた。他にも『御江戸出世物語』の版を割れと難癖をつける輩だの貸本屋を襲う輩だの、本に絡んだいざこざが立て続けに起きる。しかも全て関西弁を喋る人物が関わっているらしい。東西の版元に、どんな確執があったのか。中間の善太の言葉をヒントに、種彦は真相に辿りつく。

 戯作の五 いや、恐ろしき
数日前、湯屋で御政道批判をした戯作者がいたと言う。種彦が疑われたが、その頃たまたま酷い風邪をひいていたので、容疑者から外れられた。だがそれを切っ掛けに、馴染みの絵師だの版元だのが獄門になったとか、やたら物騒な噂が流れだす。『御江戸出世物語』の真の作者、旗本石川家の奥方直子と共に批判者を語りで明かそうとしたが、上手く行かない。だが、意外な所から事は片付く。鍵を握るのは中間の善太だった。

 戯作の六 明日が知れぬ世であれば
種彦の戯作『恋不思議江戸紫』が爆発的に売れ始めた。聞けば、その本が芝居の小道具として出て来るのだとか。新進気鋭の役者・桜月に己の作品を演じて貰える幸運を噛みしめていたら、その役者が奈落へ落ちて死んでしまった。しかも世間では作者種彦が犯人だという噂が流れていると言う。妻・勝子まで風聞被害を受けたのを知って、種彦は真相究明に乗り出す。

 戯作の終 これにて終わりますると、ご挨拶申し上げ
種彦のその後をさらりと。…

 
 畠中さんの新シリーズ、になるんだろうか。
 話の面白さというより、江戸時代の出版事情に感心しきり。著作権的なものは既にあった訳ですね。ただそれが、作者ではなく版元に帰属、というのが何とも…(苦笑;)。
 謎解き事態はちょっとこじつけじゃないかと思ったり、無理があるんじゃないかと思ったりもするんですが、時代小説にはそこまで求めませんものね。