読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ひとがた流し 北村薫著 朝日新聞社 2006年

 ネタばれあります、すみません;

 石川千波と水沢牧子は小学生の頃から、日高美々は高校時代からの友人同士。40歳を過ぎた今でも、家が近いこともあって、交友は続いている。
 千波はTV局のアナウンサー、人と時間の合わない朝の情報番組を担当後、母親の介護をしたこともあって、この年まで男っ気無く過ごしてきた。
 牧子は文筆業、離婚後女手一つで娘のさきを育てている。さきは今年大学受験、千波が忙しいときに千波の飼い猫・ギンジローの面倒を見るのはさきの役目。
 美々は元編集者。離婚後写真家・日高類と知り合い、再婚。今では類のマネージャーをしている。前夫との間の子供・玲は、自分の父親は類だと信じている。
 駆け出しの頃因縁があった朝のニュース番組、そのメインキャスターに千波が抜擢された矢先、彼女の胸に病気が見つかる。結局番組を担当できない千秋。体にメスを入れる前に自分の写真を撮ってくれ、と美々を通じて類に依頼する。丁度北海道局から戻ってきたばかりのディレクター・鴨足屋(いちょうや)良秋が千波に対して未練があるような行動を取ったことから、美々は、千波をものにするよう、鴨足屋をけしかける。当時の憧れの大先輩に思い切って告白する鴨足屋。千波は自分にはもう時間がないことを伝え、その思いには応えられないと言う。だが結局、千波の最期を看取ったのは鴨足屋だった。…

 この作品に今まで手が出なかったのは、朝日新聞での連載を読んでいたから。細切れになると、いかな名作でもなかなか「こりゃ面白い!」とは行きませんよね。その上ストーリーは知ってる訳だし(笑)。とりあえず、書架にあったので借りてみました。
 幼なじみ、友人だからこそ、病み衰え精神的に不安定になる自分を見せたくない。弱い所、甘えられる人に千波が会えたのはよかったんですが。…鴨足屋くんの造詣がどうも今いち納得行かん; 10歳近く年上の憧れの先輩・尊敬する女性に、始めは敬語を使っていたのが、想いが通じた途端にタメ口。プロポーズに頷かせるため、「あなた、だよ」とか言わせようと促す辺りで、とうとうむかついてしまいました。
 …今時「あなた」?? 私の友人・知り合いで旦那をあなたなんて呼んでる奴、呼ばせてる奴いないけどなぁ。この辺は北村さんの価値観なんでしょうね、敬語を使う年下の旦那、いいじゃん!とか私は思ってしまうんですが(苦笑;)、北村さんの中では無いんだな。
 …と言うわけで、涙涙で終わる筈のお話なのに非常に冷静に読んでしまいました。いや、勿論、骨折入院した牧子の元に千波が最後の挨拶に来て思い出を語る所とかはじ~んと来たんですが。
 そうそう、新聞連載と言えば。小説の掲載場所を同じ場所に決めて欲しいです。あんなに毎日ころころ変えられては、かなり「読むぞ!」と気負わないと読み逃してしまう。その点、日経は凄いよなぁ、毎日同じ箇所だもんなぁ。さすがおじさんメインなだけあるわ(笑)。