読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ぬばたま あさのあつこ著 新潮社 2008年

 山に呼ばれた人々を描いた連作短編集。
 ネタばれあります、すみません;

 壱
 役所の不手際のため、引責辞任させられた藤崎琢磨。家族とも別れ、幼い頃を過ごした過疎の山村を訪れる。山の中で、幾人もの女が不揃いに踊るのを見る琢磨。眩暈に襲われ気を失った琢磨を、一人の女が介抱する。部屋の天井からぼとぼとと落ちて来る蛇、甘い女の体。お助け下さいと言う女を、琢磨は喰らう。かつて自分の母親も、山に供物として捧げられたのを思い出しながら。

 弐
 上原成美は小学6年生の時、幼なじみの男の子・晶を喪っている。彼の亡骸が竹林の傍の窪地にあるのを知っているのは成美一人、何故なら彼女とそこで待ち合わせをしている時に、誤って落ちて死んでしまったのだから。口を噤んだまま20年以上が経った今、成美を呼び出す声がする。晶はまだそこで待っているらしい。成美は故郷に戻り、竹林に火を放つ。

 参
 恭平、卓也、輝樹の三人は夏休み最初の日、山の中で死体を見つけた。木からぶら下がった死体には、黄色い蝶が群がっていた。数十年後、ただ一人村に残っていた輝樹が焼身自殺をする。初期の癌に侵されていた輝樹は、繰り返し黄色い蝶の夢を見る、と卓也や恭平に訴えていた。

 四
 小さい頃から死者が見える久実子。自殺した伯父に鏡を見せて「山へ還れ」と諭して以来、数々の死者に死を悟らせて来た。今日初めて同じ能力を持った青年に出会う。顔の焼け爛れた女性に水を与えて山に還した久実子は、青年から「山に還れ」と言われる。

 終話
 山に住む老婆が物語を語る。もうすぐ山からの土砂に家は押し潰されてしまうだろうけれど、長年の夢だった物語を書き上げられて満足している。…

 これはホラーだったんですね~。お話自体は結構オチまで察しのつく内容だったりして、あまり目新しさはないんですが(←失礼;)、あさのぶしとも言うべき文章を味わうものでしょうね。繰り返される描写、現実か幻想か分からない情景。ねっとり、と言う感じ。でもあっと言う間に読めました。