読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

手紙 東野圭吾著 毎日新聞社 2003年

 ネタばれあります、すみません;

 親を亡くし体を壊し、たった一人の弟・直貴の大学進学資金を得ようと強盗に入る武島剛志。その家の老婦人に見つかり、殺人を犯してしまう。そのまま懲役15年の刑を受けるが、直貴のことが気がかりで、毎月刑務所から手紙を出す。そのころ直貴は、強盗殺人犯の兄のために肩身の狭い思いをしていた。
 今までの友人からは距離を置かれる。家賃も払えずアパートは追い出され、バイト先も兄のことがばれると居辛くなった。高校卒業後廃棄処理場に就職した直貴は、そこで大学の通信教育部の存在を教えて貰う。
 合格し、学ぶ喜びをかみしめる直貴。スクーリングで出会った寺尾祐輔は、バンド活動に直貴を誘う。直貴は歌の才能に恵まれていた。自分の身の上話をしても態度の変わらない友人を得て、ますますライブにのめりこむ。プロダクションからスカウトが来るまでになったものの、デビューには兄の存在がネックになると言われ、直貴はバンドを抜ける。
 通学課程に移り、会社を辞めてバーでバイトを始める直貴。哲学科の中条朝美と知り合い恋仲になるが、やはり兄のために駄目になった。
 兄のことを隠して家電量販店に就職するが、店に泥棒が入ったことから自分の素性が調べられ、接客業務から物流に異動となる。社長の平野から直接話をされ、「差別を受けるのは当然だ」と言われる。平野に直貴の現状を訴えたのは、廃棄処理場で一緒だった由実子だった。
 由実子と結婚し、娘・実紀にも恵まれた直貴。だがここでもやがて兄のことがばれ、実紀まで仲間はずれにされる。由実子がひったくりに会い、巻き添えを食って実紀が怪我をしたこと、ひったくり犯の両親からの自分達への態度を見て、直貴は自分の家族を守るため、剛志との決別を決意する。
 被害者の家族への謝罪に、漸く訪れる直貴。遺族は直貴に、今まで届いた剛志からの手紙を見せる。…
 
 東野作品の予約をやめて幾星霜、書架に並ぶのを待ってたら、読めるまでにこんなに時間がかかるようになってしまいました;
 …辛い話だなぁ。被害者の遺族が剛志からの手紙を忌々しく思うのもわかるし、でもそれがなかったら剛志の最後の手紙で「終わりにしよう」とは思わないだろうし。
 直貴への態度を「当然だ」とする解釈には目から鱗でした。マスコミ関係(バンド活動にしろ)の方がこう言うことには甘い印象があったのですが、それもヒット作出してからの話なのかな。
 直貴にあんなに冷たくあしらわれているにもかかわらず、あそこまでしてあげる由実子の造形にはちょっと首を傾げましたが、寺尾くんがとにかくいい奴でした。